第二十三話 Cの衝撃/大峡谷のぬくもり
出立21日目 中国18日目 香格里拉2日目
目覚めるとめちゃくちゃ寒かった。
標高3,000mだ、無理もない。おそらく地元と同じくらいの気温ではないだろうか。
測れないけど。
今日は「香格里拉大峡谷」へ向かうべく、7時半に宿を出る。
ようやく日が昇り始めたころだったが、異様な寒さ。しかも、バスがまったく来ない。
30分待っても来ない。公共交通機関の癖に、やる気がないようだ。
仕方がないのでタクシーを拾い、代理店へ。
開いていない。
9時発のバスだが、30分前にも関わらず、開いていない。嫌な予感。
ようやく人が来て、今日行きたいというと、なんと、参加者は私一人だけであった。
「夏場は混むんだけどね、寒いからみんな来ないのよ」とお姉さん。
それはそうだろう。先ほどペットボトルを見たら、中の水が凍っていた。
地元でも見ない事態に若干パニクったが、そんな日にさらに山の上に登ろうとするなんて、頭がおかしい奴だけだ。
費用は例年上がっているらしく、出発地点までのバス代(往復)+中の観光時のバス代+ガイド代で、しめて260元(5,000円弱)。
お茶の半額だから問題ないなwwww
あまりの寒さに人民手袋を購入。
しばらくすると、車が来た。
そう、車が来た。
一人だからな。おっさんの運転する日産の助手席に座り、持参の氷水を飲む。寒いな。
これから小一時間の工程だが、おっさんは英語がしゃべれない。
かかっているCDはまあまあ音飛びをし、その度に曲の初めに戻る。
道は未整備で、本当に大丈夫かという荒れた道。
しかし、このおっさん、今まで見た人民の中で、もっともマナーができたドライバーだった。
道を開けてもらったら手を挙げて声に出してお礼を言う。
無意味に警笛を鳴らさない。
追い越しの際はウインカーを出す。
すごくいいドライバーだ!
日本だと運転の荒いドライバーだ。
車は切り立った山々の間を滑るように走り、ようやく入口に着く。
ここで若いお姉さんにバトンタッチ。化粧っ気はないが、健康的なギャルという趣。
入り口を抜けた先から出発するバスを待ちながら、待機所で中国食品を分けてもらう。
さすが四川省のすぐそば。軒並み辛い。
そして迎えの車が来た。
そう、車だ。一人だからな。
ドライバーとガイドのお姉さんが前に、私は後ろに乗り込む。
あ、忘れてた。
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車は上を目指して走り、両脇には崖のようにそびえる山の断面。
川の流れが削ったために、急勾配になっているらしい。確かに、日本のそれと比べて、まるで巨大な一つの岩が各山を形成しているかのような、なめらかな断面だ。
そして集落の現存する、最高度の観覧スポットへ。
晴れてものすごくいい感じだ。山頂の方には雪が見え、青い空とのコントラストが素晴らしい。
しかし、3,000mにある街から更に上がって見上げているわけだから、目の前のすべての山が4,000m付近からそれ以上の高さを誇るわけだ。
富士山意味ねーな。
車はそこから下り、壁面に沿った歩道をお姉さんのガイドで歩く。
しかしこのお姉さん、私よりも英語がしゃべれない。お互いに必死に身振り手振りを交えて意思疎を図る。寒さに続く、いい逆境だ!
道は川沿いになっており、澄んだ水が繁殖した水草で、エメラルド色に見える。山の間を流れているため、日の光に当たらず、その色を深めているのだ。
そこに歩道の下の川辺から、おっさんが声をかけて来る。ガイドさん曰く、
「川下りが120元でできるけど、やる?」ということらしい。
寒くて死ぬわ。
スルーでしばらく歩き、再び乗車。
日当りのいい場所でお昼ご飯が提供された。
アルミの皿に盛られた、ご飯にいろんなものがぶっかけられた飯。
うまい。確かにうまいが、どう考えてもトランクに入っていたとしか思えない。
……どうやって?
同じ場所から、今度は切り立った崖の間を進める歩道へ。
ここで筆談に切り替えた。漢字ならもう少し、意思疎通ができると踏んだのだ。
とりあえず名前をお互いに書くところから始める。日が当たり、すっかり暖かくなっていた。
崖の間の道は、確かに激流で削られたことがわかるように、等間隔で隙間が空いている。左右の断面を合わせれば、ピタリと合いそうな印象だった。
あ、磨崖仏!か?
見るものをすべて見た我々は入口まで戻り、運転手とお姉さんに別れを告げて、おっさんの車に乗り込む。
予定では17時に代理店に着く予定だったが、15時過ぎには戻ってこれた。まぁ、一人だからな。
まだ日も高いので、昨日半端になった、独克宗古城内を散策。
月光広場の寺院と巨大マニ車回しを堪能。
さらに、どうやら名物らしい、ヤクのミルクと青果(麦のような植物らしい)蒸しパンを頬張る。
ヤクのミルクは少し山羊のミルクのような風味があり、牛乳よりも甘味が少ない。
まぁ、砂糖入れてたから、味自体は甘いんだけどね。こいつら何でも砂糖入れるなぁ……
蒸しパンはほのかな甘みでしつこくなくてよし。少しカボチャに似た風味だった。
明日にはシャングリラから移動となる。
前二つの観光地化され切った街よりも、落ち着いてはいたが、未発達な部分もあり、秘境という言葉がそれなりに似合っていた。
そこからは状況次第のため、更新は未定です。
ではでは!