第五十一話 Lの危険な香り/いつまで青いせせらぎを聞きながら
出立55日目 ラオス9日目 ヴァンヴィエン4日目
ここ最近、同じサンドイッチ屋で朝食を駆っているが、やはりボリュームが理由であろう。
売り場のお母さんとすっかり顔なじみだ。
さて、本日はツアーでのカヤッキングである。
ヴァンヴィエンの街が面している、ナム・ソング川を下って来るもので、タイヤのチューブを使って川を下る『チュービング』とともに、メジャーなレジャーである。
ちなみにチュービングは、川の両側のバーでの休憩を挟んでゆっくり流れに乗るもので、欧米人に大変人気だが、酔っ払いによる死亡事故も起きているらしい。
浮いてるだけってのもな、ということもあり、今回はカヤッキングを選択。
9時ピックアップだが、待てど暮らせど来ないので、10時に代理店に直訴。やはりピックアップが漏れていたようで、ヒュンダイの乗用車で追いついた。
しかし、そこまで急ぐ必要があったのか、追って疑問が生じる。
今回のツアーは、2つの洞窟を見て後、カヤッキングを行って17時に解散。まぁ、遠ければあり得ることだなと思っていたが、ことのほか早く現地に着けた。
まずはチュービング同様、タイヤチューブに乗って水没した洞窟を、縄伝いで進んでいくというレジャーなのだが、これが全然始まらない!
11時ちょっと前に着いたが、すでにかなりの人だかり。欧米人と、それを上回る韓国人の団体。こうまで単一民族ばかりが我が物顔で居座っていると、差別論者でなくとも何やら後ろ暗い感情が湧いてくる。
ガイドから、本日はまず昼食後、ツアーです、と連絡。
昼食後っ!!?
ちなみにカヤッキングは、ハーフデイという半日のみでちょっと安いコースもあるのだが、何だ、それでよかったんじゃ……。
まぁ、この洞窟はこっちしか見れないからな!と納得させる。
昼食はピラフにBBQの串二本。食い終わるくらいのタイミングで、フランスパンがやってきた。遅いよ!もっと早く来ればBBQ挟めたでしょ!
うーむ、不安になってきた。今日のツアー、かなり段取り悪いぞ……
案の定、食後1時間近く待たされ、ようやく洞窟ツアーへ。
ヘッドライトを装着し、張られた綱を辿っていく。み、水が冷たい!
当然下は水着での参加だが、日光の届かないところはやはり冷たい、寒い。
しかもライトが暗すぎて、ほとんど何も見えん!欠陥品渡しやがったな!
目を凝らすと、かなり水で滑らかに削られた壁面が見える。実物見たことないが、イワークの体表って多分こんな感じ。つまり生物感がある、ってことですね。
やや広い空間には鍾乳洞的なものもあり、冒険感が演出される。いいぞ、こういう感じだ!
帰りも同じルートなのだが、綱は一本のみ。すなわち、入ってくる奴らと鉢合わせる!
序盤は綱もなく、ガイドに押されているのだが、ぶつかって全然違う方に行くことも。
あっ、この婆!進路変更のために俺を蹴りやがった!思わず日本語の蔑称で悪態をつく大人げない私。仏果を得てないわ、つくづく。
ようやく洞窟から出ると、今度は仏像の安置された小さい洞窟へ。洞窟っつーか奥行き5メートルくらいだけど。
更にここからトゥクトゥクで下流に移動である。えっ?下流?
辿り着いた場所で待つこと30分ちょっと、ようやくライフジャケットとカヤックが登場、乗り込む。
リョウ君がバイト等含めた経験者であり、彼のコーチングのもとスタート。
そもそも流れに乗っていればゆっくり下っていくので、スピードアップや方向転換も、最小限でOK。つまり、何もしなくても帰れるのだ。楽!
少しずつ操作に慣れてくると、川や周りに目が行く。午後の穏やかな日差しが水面に反射し、遠くのほうはキラキラと輝く。両岸の緑もみずみずしく、その向こうには雄大に岩肌を見せる山々がそびえている。快晴の空のもとで小鳥がさえずり、大きく息を吸うと、豊かな自然の香りが飛び込んでくる。
すぐ近くに目を移せば、透き通った水面から、川底の石の形までわかる。ああ、ラオス。すばらしい。カヤッキング、素晴らしい。途中のグダグダな段取りの悪さはアレだが、やはり参加してよかった。
距離としては2~3キロ程度だったが、実に楽しめた。まぁ、もう少し上流からでも全然OKだったけど。
終わってみれば17時前。確かに、ツアー予定の通りだ……。
夕食はベジタリアン向けレストランで菜食を。やや足りないので今日もパンケーキである。
えーっと、バナナ、コーヒークリーム、ココナッツミルク、だったか。甘いな。
毎日食っているが、シンプルなのが一番うまい。
明日は大晦日なのに移動日。世界遺産の街・ルアンパバーンである。
しかし、恐ろしい山道という情報がある、しかも7時間(つまり9時間くらい)。
年の瀬に波乱の予感である。