第二十九話 サインはV/彼は後年「正せ」といった
出立28日目 ベトナム5日目 フエ1日目
夜行列車を降りた駅はフエ。
かつて王朝があったところで、古城的な街並みもある町である。
日本語で話しかけてきたおっさんは、ツアー会社の人で、以降のバス移動について、まとめて手配をかけた。ついでにツアーをいくつか。
だいぶ楽にはなったが、反面、つまらない部分もある。
次はどうしようか、というのを考えながら旅をしていくのが面白いのだが、出国までの手配を済ませてしまったため、折角無謀な旅をしている意味がないように感じた。
少し反省。
さて、宿についてもまだ午前中。余裕はあるので、自転車を借りて周辺の探索をしようと飛び出した。
この時の僕はまだ、この後に待っている事態を、想像してすらいなかった。
いきなり腹が減ってしまったので、食事に。
COMと書かれた場所に米があることは知っていたので、イチかバチか、メニューもない店に突撃してみた。
どうやら、すでにあるおかずを、ご飯の上に乗せて出してくれる方式のようだ。
続いて、ティエンムー寺。
最初に見たときは、ついぞ続編が出なかったサターンのソフトを思い出したもんだが、おそらく関係ない。
この塔がランドマークで、逆に言うと後は特に何もない、入場無料の寺であった。
続いて、Lang Tu Duc。
良くわからんが、複数人の墓のような施設であった。おそらく、フエの王朝のものだろう。
妙に広く、妙に高い入場料だったが、修復中の場所が多かった。
もしこれでフルプライスなら、激オコである。
さて、前述の悲劇であるが、借りた自転車がスクラップ同然で、砂利や水たまりを走ると即チェーンが外れるクソ仕様であった。
何とか遠くの上記二つを回ったところで、もはや航行不可能と判断、ホテルで文句言って交換してもらった。
しかし!時すでに遅く、メインたる王宮は入場時間を過ぎていた!ガッテム!
明日は早朝からのツアー旅行、明後日は朝には出発予定→行けねぇえええええっ!
なんだかなぁ。しかし、かの月光仮面も「憎むな、恨むな、赦しましょう」と言っていたので、まあ仕方ないだろう。
つってもチェーン外れるたびに日本語であたりのクソベト民に当たり散らしてましたけどね、主にドライバー。
気を取り直して、夕食です。
ホテルの下についてたところでいいや、と投げやりな私。
ハノイもそうだったのだが、「日本料理」と銘打つものが結構多い。
日本料理店や、こちらのレストランでは「Japanese Food」のページがあり、見たこともない日本料理が並んでいた。
そしてなぜかページの下に「きます」と書かれている。なんだ?どういうことだ?
町でも結構日本語で話しかけられることは多く、親日派が多いのかもしれない。
歴史面でいえば、大東亜共栄圏ってのでフランスから解放したと右翼は威張っているが、フランスと共同でいろいろやっていたことを考えると、好印象を持つ要素ではないだろう。
韓国人か、と聞かれたことはベトナムではないが、ベトナム戦争時の韓国軍の戦争犯罪を鑑みると、どの面下げてきやがった!となりそうなので、国が規制しているのかもしれない。
話が大幅に逸れたが、今日の夕飯は「フエのトラディショナルフード」である。
店の照明のせいで本当の色は定かではないが、豚肉入りの米麺である。
地域ごとに麺の種類は違うということで、確かにフォーとは違う気がした。
味自体は非常にたんぱく。
続いては、料理名がはっきりしないのだが、エビと香草を、スープゼリーでとじたもの、といったところか。
英語表記からは羊歯とかそういう断片的な情報しかなかったため、出てきたときは面食らった。
小エビを包むゼリーが味を凝縮しており、香草がアクセントを添える。
見た目に反して、決して派手ではないが、印象に残る味であった。
橋の下でナイトマーケットがやっているという情報を得て行ってみると、これまでのような観光客向けのものではなく。衣類などメインの、地元密着型のマーケットであった。
マンゴーがカットされてカップに入った食べ物が売られていたが、今日はパスだ。
衛生面も気遣う必要があるだろう。
明日は早くに出て、戻ってくるのは夜のツアーであるが、絵面がどうも単調になりそうで不安である。