第十五話 Cの衝撃/花津真理からの手紙
拝啓
お元気ですか。
昨日・今日と30時間鉄道の旅による移動だと聞き、手持無沙汰であろうと思い、お手紙を書きました。
その後、男磨きの方はいかがでしょうか。
初めて「ユーラシア一周じゃあ!」とか言い出した時は、いい歳して自分探しでする気かと、ぶん殴ってでも止めようかと思いましたが、
「自分探し……だと?俺は、ここにいる……が?」と、まるで幽霊でも見たかのようなリアクション、正直面くらいました。
海外旅行のひとつもしたことがない、英語だって苦手なあなたが、何を血迷ったというのでしょうか。いくら聞いても、「理由?行きたいから行くんだよ」と答えるあなたがアスペかと不安になることしばし。
しかし止めようがないと分かった今は、上記の通り、男磨きがその目的であると解釈しております。
中国の方との文化の違いに戸惑っていることや、キレそうになったこともいくつかあると伺っています。
何せ言葉が通じないのですから、無理もありません。
ただ、それを逆手にとって、日本語で毒づいているとも伺いました。
何はともあれ、強く生きているようで、安心しました。
最近の懸念事項は、専ら詐欺やらに会わないかということです。
先日のお茶の一件、大変でしたね。
「カモられた」という記載を見たときは、一瞬、美人局にでも合ったのではないかと不安になりました。
女性関係では奥手なあなたのこと、間違っても金を払って関係を持とうとはしないかと思いますが、長い旅です。また、いろんな人にも会うかと思います。
東南アジアには買目的で長期間滞在する日本人も多いようですので、くれぐれも変な影響を受けて、如意棒をカリン様に届かせる勢いで牙突するような愚行は犯さないことを願います。
さて、昨日は日本の方にお会われたと聞きました。
何度も旅をされているその方から、四川は五明の話を聞き、ベトナム行きを延期して、中国を掘り下げることも検討されているとか。
本日、明日は昆明にご滞在とのことで、ゆっくり検討のうえ、ご移動ください。
日本はもうすっかり冬で、首相がこれ見よがしに選挙をもくろんでいます。
くれぐれも中国との摩擦を生むような行動を控えていただくことを、切に願うばかりです。
そちらは日本よりも幾分か暖かいと聞きます。
ただ、尋常じゃない体力勝負を展開し続けるあなたの体調が心配です。
くれぐれも無理することなく、ご自愛ください。
敬具
2014.11.18 京都にて 花津 真理