第八十八話 Iが止まらない / 命の巡る川と外道照身霊破光線
出立98日目 インド13日目 ヴァラナシ2日目
昨晩寒さに震えそうだった僕のもとに、宿のおっさん降臨。ブランケット貸してくれた。
なければ即死だったな。。。
しかし眠りは浅かった。蚊の舞う音がウザかったためである。
今日はその辺の対策をしないと……。
とか思っていたら、辺りが明るくなってきた。
窓の外を見ると、何っ!?ガンガービューじゃねぇか!!!
昨晩は暗くて気づかなかったが、ガンジス川(こっちでは女神の名と合わせ、ガンガーとよぶらしい)がよく見える川沿いの宿なのである。
よっしゃ、行くぜ!
宿のすぐ裏手から、ガート(ガンガーに降りる階段)が伸びており、そこを下りていく。
もうすぐ日の出である。
気温13℃とかそんなもんだろうか。寒空の下、既に沐浴するインド人が多数。
やはり聖なる川なのだな。
若干の雲が地平線を覆っているので、きちんと見えるか不安だったが、登ってきたよ、朝日!
いい感じです!!
ああ、こうやってヴァラナシの朝は始まるんだなぁ。
多くのインド人たちも、昇る朝日を見つめていて、沖にはいくつも船が出ている。観光客も乗っているんだろうな。
ホテルの部屋に戻ると、屋上に上る階段を発見。
うおっ、ガンガー見えるし、日当たり良好!
軽くストレッチして瞑想してみる。うーん、気持ちいい。
すぐ近くというか、ドミの屋根で猿たちが日光浴をしている。長閑でいいなぁ。
少し寒いけど、実質個室だし、まぁ物干し兼ねてるから田中康夫のやった知事室みたいなもんだが、いい宿じゃね??
と気を良くしたところで、腹が減ったので街へ。
プリー&カレーとチャイを飲む。
さすがにブッダガヤの屋台程のクオリティ&プライスは見込めなかったが、チャイはきちんとスパイスが効いており、久しぶりにちゃんとしたのを飲んだ。
街をブラブラして、「BABA ラッシー」という店へ。
ラッシー=飲み物だと思っていたわけだが、出てきたのはちょっと緩めのヨーグルト。
さっぱりして美味しい。ヨーグルトの塊を水で溶いて作るようだ。30R。
フルーツ入りは倍くらいの価格になる。
店は欧米人だらけ→韓国人だらけに推移した。
昼食は近場のカレー屋へ。日本語でおすすめメニューが載っており、日本人が書いたっぽかったので従ってみた。
エッグカレーとチャパティ3枚、65R。
このエッグカレー確かにうまい。
味はマイルドで、スパイスが自己主張し過ぎない。日本のカレーに近い調和のとれた味で好印象。欧米人の群れている店に外れはない、とNさんが言っていたが、これはいい店だ。
その後、蚊取り線香的なアイテムを確保し、再びガンガーへ。
そういえば、と思い出したので、マニカルニカーガートへ向かう。
ここガンガーは死の香り立つ命の川である。
マニカルニカーガートは、死体を焼く、火葬場的なガートで、その火は24時間絶えることはないとか。当然撮影禁止。
辿り着いた際には、薪で組まれた台に乗せられた死体が焼かれ、実にインド人らしい、色黒の人間の足がよく見えるというストレートな光景がお出迎えで、早速先制パンチをもらった。
火葬場は三段構成。家庭で洗われた死体が、カンガーで再び水に漬けられてから、燃やされる。
女性は白い布、男性はオレンジ、老人は金色の布で覆われている。
これが牧の台に乗せられ、だいたい2~3時間程度焼かれ、あとはガンガーに流される。
全ての命はガンガーに帰るのだ。
が、さらにショッキングな事実が。
前述の三段構成だが、実は焼かれる場所はカーストで決まっており、一番下が例のアレ、ハイカーストは屋根付きの焼却施設で、人目につかない荘厳な建物内にある。
あー、なんか、すべての命は……って、合ってるんだけど、なんていうか、そういうことなんだな。
そして、子どもや修行中の僧は、命を全うしていないからと、石の板を括り付けられ、そのまま川底に沈められるらしい。
ちょっと理屈がわからないが、そう言うならそうなのだろう。
さすがインドである。
この死の光景を見つめながら、輪廻やカルマに思いを静かに馳せていた。
……馳せていたかった。
平たく言うと、タイトル通りである。
では、私がマニカルニカーガートを去るまでに遭遇したインド人を紹介しよう。
①勝手にマッサージャー
→ ナマステと手を差し出し、握手を強要。そのままマッサージ開始。思い当たったが、ノーマネーといったのを確認。
首とか頭をやったら50Rとか言ってきたので、振り切るぜ!
②お店やってるインド人
→ 近くで衣料品店を営むおっさん。ガートへの移動中に話しかけてきた。
「見たらウチの店に来てよ」と着いてきて、勝手に火葬場の説明を開始。
静かに一人で見たいと何度も説明するが、何度も声かけてきたので、ちょっとキレてあとは無視。いなくなる。
③ガイドやってくる、死を待つ家の奴
→ 丁寧なガイド(上記のことを教えてくれたのは、実はコイツ)をし、その後、自分は火葬場の裏にある死を待つ家のものだが、そこはお金が足りないので、寄付をしてカルマを果たしてくれ、と言ってきた。
「地球の歩き方」にも載っている典型的な手(少し払うと、カルマを果たしていない!とか言って来るらしい)で、思わず笑ってしまった。
「それでは彼らのために祈ることにしましょう、それが私にできるカルマの果たし方です」とか、しつこいようなら言ってやろうと思ったが、ずっと見ているうちにどっかへ言った。
④薪代を要求してくる奴
→ じっと見ていると、「お前は長時間見ているが、薪代は払ったのか。払っていないなら家族を呼ぶぞ」と絡んでくる。当然、そんなものは不要。
「そんな金は必要ない」といってもしつこいので、手を振ってその場を去る。
同じことをしてくる奴が、火葬場を去る時にも現われ、しつこいが、完全無視。こちらを追い抜いたかと思うと、今度は小屋を指さして、「葉っぱ、葉っぱ!」と言い出した。薪代はどうした?
①は面倒だが笑って済ませる、②はガンガーを見に来た目的を阻害するので、こいつの店には絶対に行かない。
③と④は論外。コイツ等、死者を最後に見送る神聖な場所で、私利私欲のために死者を利用する冒涜行為。許しがたい。その命を神に返してほしいところだ。
今日ほどインド人に怒りを覚えた日はなかっただろう(一部の奴に、だが)。おかげですっかり気分が萎えてしまった。別にテンション上げに来たわけじゃないけどさぁ……。
そんな私の目に「BLUE RASSI」の文字が。
確か各日本人宿の情報ノート記された、有名なラッシー屋だ。ということで、行ってみた。
中でもこちらのブルーベリーラッシーは絶賛されていた。
生のブルーベリーを粗くつぶして混ぜ合わせる訳である。
うん、うまいブルーベリーヨーグルトだね!そんな感じ!つーか基準がさっきのプレーンラッシーしかないからさ!ちなみに60Bだから、飯がお腹いっぱい食べれる価格だね。
そんな訳でため息交じりで宿に戻り、しばらく後に待ち合わせたJさんと一緒に夕食へ。屋台でモモを食べた後、大通りの大き目の店でターリー。悪くない味。
ボーイも親切で……チップ?やらんよ。
そんな訳で、他にもインド人が絡んできたわけだが、前世魔人ばりに外道な奴らに出くわして、すっかり嫌になった1日であった。
日本人が日本人宿から出ない理由がわかった気がするぜwww