第三百二十四話 セブン・P/ 恐るべきニチアサの罠
出立149~51日目(通算399~401日目) パラグアイ1~3日目アスンシオン1~3日目
朝食はどうやら出ないようだ。
バスはほぼほぼ定刻通りにクロリンダの街に着いた。バスターミナルではないどこかだったが、いちいち騒ぐことでもないだろう、最早。
国境の町というのはどこも同じような雰囲気で、観光で訪れる都市とは10年くらい時を遡ったような雰囲気を持っている。ここもそうだ。
ちょっと用心しつつ、パラグアイとの国境へ向かう。
クロリンダからの国境は3か所あるようで、陸路だとバスも通る大きなところと、商店街にポットある、主に地元民が使うところがある。
後者はが面白そうで、歩いていける様なので、こちらにする。
Maps.meにも地味に表記があるので、案外楽だ。周りはマーケットになっているが、重い荷物を背負っているので、さっさと通過。
で、本当に商店街の奥にこれが現われる。右にフルーツが並んでいるのが見えるだろう。
どうもアルゼンチンとパラグアイの両国民はパスポート無しで通れるようだ。どの程度まで通れるのかわからないが、生活圏が被っているんだろう。
この右手にそっとパスポートコントロールが並んでいる。
宿の方からも言われていたが、うっかりパラグアイのイミグレを忘れることがよくあるようで、アルゼンチン側の兄ちゃんも、隣行けよと注意してくれる。
特に書類も不要で、下手するとこれまでで最短の国境通過だ。
この橋の向こうがパラグアイ。もう本当に生活圏。
ここから首都アスンシオンまでは、バスで1時間半ぐらいの様だが、バス代の調達が必要だ。
両替商に効くと、アルゼンチンペソからの両替はかなりレートが悪い。
そういえばアルゼンチン側の方がいい、なんて聞いたことがあったな。
アルゼンチンにはまた行くし、ただでさえレートが悪い中交換しているものを更に減価させてもアレなので、ここは持っていたドルを交換。ま、これもそんなに良くないから、アルゼンチン側でしてくるのがいいだろう。
バスはかなりローカルなものだったが、運よく一番前の荷物が置けるスペースに座れたので、ここでのんびり揺られることに。物売りやらが乗り込んでくる、南米特有のローカルスタイル。バス料金的にも6,000グアラニーだったかな。安い国に返ってきたぜ!
あ、グアラニーは0を2つ取って2倍にすると大体日本円。つまりこの場合は120円。
さて、地図上だと目の前なのだが、川を迂回したりで1時間半以上が経過。長閑な風景から、瀟洒な住宅街みたいな雰囲気の中、終点へ。終点……どこだ、ここは。
GPS見ると住宅街の真ん中。大通りまで出てバスを拾えばいいか、と出てみると、あと1.3km。歩くか!
こうして夏を迎えつつあるパラグアイの日差しの中を、重い荷物を背負って進む私。
おおい、これマンゴー?大量だなぁ……仰ぎ見ると鈴なりの木がちらほら。食えるのかなぁ。
本日のお宿・らぱちょに無事到着した。
ここはジュンジさんのJマップにも記載された、元旅人の夫婦が営む日本人宿だ。
かなり評判もいい。
ここまでに崩した体調を整えるべく、のんびり過ごすつもりでやって来たわけだ。
早速冷えたお水で体調を整えつつ宿の説明を受ける。
「今オフシーズンでお客はいません」と奥様。
えーっ!?
いや、オンシーズンがいつなのか、南米はいまだによくわからんが、つまりなんかこう、旅人同士の交流なんかが、日本人宿に来たらしたくなるわけじゃないですか、ウザい時もあるけど。
まぁいいや。休みに来たんだし。
さて、アスンシオンはパラグアイの首都。ブラジル、アルゼンチン、ボリビアに囲まれたこの国だが、前回も述べたが、取り立てて目立つ観光スポットはない。どれくらいないかと言うと、『地球の歩き方』でこの国だけ2色刷りにされているレベル。さらに記載の仕方も何か侮っている様な具合だ。
ただし、多くのバックパッカーが沈没する国でもある。
取りあえず飯にしよう。
宿から大鳥まで下ったところのこぎれいなレストランを勧められたので入店。ここで例によって訳の分からないものを注文してみた。
ピラフ的な?お肉たっぷりでおいしい味付けだ。少なくともボリビアよりおいしい。15,000だからそんな安いわけでもないか。そして何よりデフォで付いてくるパンの存在。ライス主体の食い物じゃなければ、丁度良かったんだが……。
このままスーパーに行こうと思ったら、あまりの暑さに一度宿に戻ってしまった。といっても32度くらいのもんなのだが、しばらく高地にいたために、少し面食らった次第。
さて、しばらく日が傾くのを待つ間に、Jマップで前日までいた街・サルタの見どころとされた『雲の列車』の話でも。
雲の列車は世界一の標高を走る列車だとかで、チリの国境辺りまで走る観光列車だとか。
どのツアー会社にもあったが、ネットで調べた限り、数年前で17,000円とか。アルゼンチンの急激な物価上昇を鑑みれば、今はもっと高いだろうな。
ブログなどでは「あの」写真が撮れるのはこの辺り、みたいな紹介がされていたが、全く見たことのない写真だったので、そこまで有名になり切れてないんだろうなぁ。
ご飯も付いて優雅なものらしいが、鉄道オタクでもカップルでもないし、今の体力と気力で乗ったら雲どころか天国に行っちゃうかもしれないので、やめておいた。うむ、ま、彼女でも出来たら行くかな。行かないってことかな。
少し日も傾いたので、お金を降ろしてスーパーにやって来た私。
ネット環境なのか、日によって使えるATMが異なるとか聞かされていたが、2軒目で使えたので、良かったのかな。
そしてスーパーに入って、何故沈没者が出るのかわかった。や、安い!
アルゼンチン同様に肉とワインが安いのだが、圧巻はビール。安いもので12缶24,600グアラニー。そうです、12本で500円暗い。つまり1缶40円くらい。あーこれはダメだ。
お菓子も国産のものが安いのはボリビアと一緒。もちろん国産ですよ。輸入物は他の国っていうか、日本でも食えるヤツだからね。
何もない国とか言ったが、ビールが安いだけで大好きな国になってしまったぜ。
宿で情報収集をしていると、奥さんと娘のマナちゃんが帰ってきた。マナちゃんは5歳。これがまたくりくりした目で可愛らしいんだね。最初は距離を取っていたが、すぐに慣れ、いつの間にか彼女のペースに巻き込まれて遊んでいた。さすが宿屋の娘。コミュニケーション能力の高さたるや。
海外勢とはいえプリキュアが好きだという点は変わらない様で、双六を取り出した。
これを一緒にやるのかと思っていたら、お人形遊びが始まった。子どものイマジネーションはマジスゴイ。ストーリーもすごかったけど。
そのうち節分の鬼のお面を塗り出している横で情報ノートとか見ていたが、お面の切り取りが終わると、ごっこ遊びをしよう、と提案……された。
「私が鬼やるから、お兄ちゃんプリキュアやって」
俺がプリキュアやんの!?一つも要素合ってない!いや、そもそも好きなら君がやりたいんじゃないのか!?
困惑する私をしり目に、「早く早く!」と急き立てるマナちゃん。
なんてこった!これは伝説級の難問だ。なんとなくニチアサ枠だから知った様な気でいたが、いざやれと言われると全く何も思い浮かばん!こんな無茶ぶり日本語でされたのはリーマン時代以来や!
取りあえず漫才の出だしみたいな感じで始めて、一挙手一投足の前に「キュア」ってつけとけみたいな感じでやってたが、合っていたんだろうか。子どもに「違うよー」って言われるお父さんの気持ちが初めて分かった。ま、最終的にかめはめ波撃ってたけどな。
子どもはとにかくパワーがある。
療養に来たのに力いっぱい遊んじゃって意味ないんじゃ、とも思ったが、気力は充実して、むしろ調子がいい。子どもにパワーがある、というのはいろんな意味があるもんだ。
ただ、小さい女の子と遊んでいると、どうしても「事案」という言葉がちらついて、どの程度までやっていいのかという正解のない躊躇が生まれていたのも事実だ。まったく、変態よ、滅べ。
夕飯は玉ねぎまみれのステーキと冷やしトマト。そして奥が40円のビールだ。ビールは南米らしいテイストだが、普通にうまい。日本の発泡酒とかより断然うまい。そら本物ですものね。ただ、滞在3日で12本飲むとなると、休む気あんのかって感じだがな。
翌朝、パンとコーヒー・紅茶の軽い朝食付きで、下でやっている食堂の余りがもらえるときもあるとか。この日は味噌汁ゲットだぜ。
実は前の日もいただいていたのだが、赤だし系。取り立てて日本食食べなくてもいいかなーみたいな気分だったが、実際に一口含んでみると、ああ、やはり俺は日本人なんだな、としみじみに思うのであった。
もとより休む気でいたので、外出も特にせず、宿にある漫画を読みだす。「三つ目がとおる」と「City Hunter」をチョイス。やっぱ手塚治虫天才だわ。この呪文にセンスが……。
とかやっている内にマナちゃんが帰宅。午前と午後で日本語とスペイン語の幼稚園に通っているといっていたが、スペイン語の方が夏休みに入るのだとか。
そうです皆さん、南半球なので、これからが夏休みなのですよ。
つーかもう昼じゃん、ということで、昼飯を食いに出かける。
メルカドを見て回ったりしたが、どうもピンと来ない。そのうちに韓国人経営のパン屋に。日本系のもあると聞いていたので、ここで買って戻ることにした。
パラグアイはハングルを町中で見かけることが結構あり、日本人もいるが韓国人も多い国の様だ。
宿に戻ってこちらがお昼。あんパンと、手前はなんかしょっぱいかと思ったら甘かったパン。
パン生地がもちもちとしていて、パサパサの南米系とはやはり違う。あんこも結構いい感じに再現できている。うまい。
午後は当然の様にマナちゃんと遊ぶ。他に宿泊客がいたら過ごし方も違ったかもしれないが、そうなると、どうだったんだろうなぁ。
この日は隣の男の子も現れ、二人を振り回したり水遊びしたりで大騒ぎだった。別に楽しんでるからいいが、休めているのか、俺は!?
食材の都合で夕食は前日と同じものに。酒が潤沢にあると心にゆとりができるのがいい。この日はおかしも食べたが、日系の企業のものらしい。仕上がりにムラがあるが、安くていい。
翌日。ここまで読んでいただいたみなさんもお気づきかと思うが、まぁ写真がないほど行動していなかったので、流石にセントロまで行ってみっか!と腰を上げる。ちょっと曇っていたので、出掛けるにはちょうど良さそうだ。
らぱちょからセントロまでは結構距離があり、歩いていけないほどではないが一苦労だ。
アスンシオンは地方都市っぽい感じだ。コロニアル系の街並みなのだが、地図見た感じ、セントロにカテドラルもなさそう……
ハイ、メインの広場にある霊廟。パリのアンバリッドを模して造られたもの。興国の英雄が祭られているらしいが、工事中で入れず!
独立の家。
1712年に建てられたコロニアル風建築で、1811年のパラグアイ独立発祥の地である。
三国戦争当時の大統領の邸宅にもなっていた様だ。ここはガイド付きで、英語で話してくれたのだが、イマイチわからなかった。興味がわかなかったんだろうな、我ながら。
ここから川の方にしばらく歩いて見えてきたのが、大統領邸宅。
19世紀後半にパリのルーブル美術館を模して建てられたという。ヨーロッパ被れだな。
川岸まで出てみた。うむ、濁っている。こんなもんだろうなぁ。
帰りに旧鉄道駅へ。そういや、今は走ってないんだなぁ。
さて、ひねり出して見てみたが、本当にすることがないんだな!諦めて宿へ戻り、その途中でスーパーに寄った。
丁度マナちゃんも幼稚園帰り。「お兄ちゃーん!」と呼んでくれるのだが、いかなる時もこうなので、時々テリーとドリーを思い出す。
買ってきたのはこちら、「ソパ パラグアイ」。奥様曰く、コーンポタージュ煮詰め過ぎて出来た的な由来を持つもので、その名の通り、チーズ掛かったコーンの塊といった感じ。雑な経歴だが国の名を背負っている、付け合わせ等でよく使用される料理らしい。うむ、悪くはない。
ちょいちょい遊びつつ、ここで今後の航空チケットを購入。おお、ついに帰国が見えてきた!
マナちゃんの遊んで攻撃に妨害されつつ風呂を出て、夕食へ。
らぱちょ1階は「菜の花食堂」になっていて、お父さんが営んでいる日本食レストランだ。リーズナブルな定食屋をコンセプトに、かつ丼などの定番をはじめとして、様々なメニューが提供される。
折角なのでお願いすることにしていたのだが、初日から迷っていた。案外、数か月ぶりにいざ日本食を何か一品食べるとなると困るものだ。
悩みぬいた末、焼き鳥をオーダー。
1本5,000グアラニーで、外の焼き場できちんと炭火焼きにしてくれる。皮、モモ、ハツ、レバー、砂肝をたれでオーダーした。塩ならペルーでも食べたし、日本らしさを出すならタレだろう、という発想からだ。ハツと砂肝をたれで食べるのは初めてだが。
これがうまい。皮はパリパリだし、他のも日本の居酒屋で食べるのとそん色なく、ビールに合う。思わず笑みが漏れるほどだ。
奥様がおっしゃることには、パラグアイ人は結構不器用だったりいい加減だったりするようで、なかなか教えるのが難しいらしい。文化や考え方の違いというのは出るものなんだな。
さて、少し量を控えたのは訳がある。この辺りにはもう1つ、名物がある様だ。超巨大ハンバーガー。1kgを優に超えるという代物で、1度の完食はなかなかに厳しいとか。
それなら買ってみようということで出掛けた。
で、デカい!
隣に置いた缶ビールでお分かりいただけるだろうが、ほぼ同じ高さ。そして小鍋くらいはある大きさ。以前、某国際的なハンバーガーメーカーが「日本のハンバーガーよ、遊びは終わりだ」とか抜かしていたが、これくらいのを出してからデカい口を叩いてほしいものだ。あ、ちなみにこれで35,000グアラニーなので、700円くらい。やばい!
肉もかなりの厚さがあって、店でしっかり焼いているので味もよし。トマトやチーズのアクセントもいい感じだ。店ならサルサが数種あるのだが、味変しないと後半はきついだろう。
まぁ翌日のお昼に回す気満々の私は普通に半分くらいで残したが、それでもかなり腹は膨れる。
宿の情報ノート上ではこれを一気に食べることに美徳を感じた様なイキッた大学生みたいな書き込みが散見されたが、そういうことしないで普通にシェアするのもいいだろう。相手がいれば。
そんなこんなで最終日のステイも終わりを告げた。
さて、翌日はパラグアイ内での移動だ。
戦後に移住した日本人たちが暮らす村だという!日本人周りが続くが、その先はまた修羅の国に向かわなければならないので、チャージが必要なんだ。みんな、応援よろしく!
輝く自然が、我を呼ぶ!