第三百三十四話 モーター・A・ダイアリー / ワイなりのワイナリー
出立170~1日目(通算420~1日目) アルゼンチン17~8日目 メンドーサ1~2日目
朝はお菓子とコーヒーまたは紅茶。両方付いてくるけど。
お菓子はこれまでと違うかと思ったら、外側が白い砂糖系のコーティングに変わっただけであとは一緒だった。何だろう、買収でもされているんだろうか。
流石にパタゴニア地方から抜けてから、街中を走ることも増えてきた。
そして(多分)ぶどう畑が多く広がる。さすがはワイン大国。期待が高まる。
バスは13時過ぎにターミナルへ。
取りあえず次の街へのチケットを買う。ほとんどが現金払いのため、カード使えるところで購入。現金の所は大型バスで760とかだが、カードなら850の所だ。差額考えても、ATM使うほどじゃないね。
ターミナルは比較的セントロに近い良心的な場所にあるため、歩いて向かえる。特に治安も悪そうではない。しかし大きな問題が。暑い!暑いでわす!そう、南米はこの時期、北に行くほど暑くなる。だって夏だから!
2.5kmくらい歩いて宿へ。僕を助けてきたズボン下が、首を絞めてきますな。
部屋が南米諸国の名前になっているエリアで、つい最近話題にした「キューバ」が私の部屋。Wifiが届かない辺りまで寄せて来る徹底ぶりだ。
移動疲れであまり動きたくないのだが、取りあえず街に出てみる。
メンドーサは1561年、植民地時代に街の歴史が始まるが、1861年の大地震で甚大な被害があったため、当時のコロニアルな建築がほとんどない。写真撮ろうと思うところ、一つもなかったからね。
南米独立戦争の折、英雄サン・マルティンがチリ独立支援のため5000人の「アンデス軍」を率いてこの街から国境へ向かったのが有名だ。また、南米最高峰・アコンカグアへの拠点としても利用されている。
碌なもの食べていなかったので、公園横のコンビニ的なところで、スーパーパンチを購入。
20ペソ。結構ボリュームがあり、アルゼンチンであることを考えれば、驚異的な値段だ。まぁ、サルタの公園の奴のが安かったけどね。サイズが違うからね。これを公園でいただいた訳だが、食べ終わった後の厚紙放置はともかく、食べかけが放られているのを見ると悲しい気持ちになる。多分こういう奴はアイスのコーンも捨てる外道だな。
シエスタ時間とかぶっていたこともあり、ツアーデスクも開いていない。メインのサン・マルティン通りを歩いたら、あとはスーパーで買い出して終わり。もうね、とにかく眠くなっていた。
ということで宿でダラダラして、夕食の時間に。
これ、いい肉でしょ。「チョリソ」ってのが部位的にはいい感じっぽいことを初めて知ったよ。だってチョリソってお前、ソーセージだって言ってたじゃん、今まで!という裏切られた気持ちでいっぱいだが、ともかくこの値段なら文句ない。テンション上がって写真撮っちゃったわけだが、ドイツレディスに見られていた。そういえばチャルテンでも「なんで毎回食べ物の写真撮ってるの?」って聞かれて困ったな。彼女もドイツ人だったか。
ともあれ、これがきっかけでレディスと話すことになった。SちゃんとAちゃんである。Sちゃんは日本に行ったことがあるらしく、その時のことを楽しそうに話す。スゲー快活で物おじせず、これは男女ともに好かれそうだなーって感じ。痩せれば確実に美人だし。
そしてAちゃんはなんかモデルかって感じにキレイな姉ちゃんだ。
そんな楽しいクッキングタイムを経てどん!
もうね、食った瞬間ガッツポーズしましたよ。うますぎぃ!100ペソですからね。650円いかないんですよ、4枚で。つまりこの日のだけなら300円台。ワインのマグナムボトルも72ペソ。アルゼンチンさんはレストランは攻撃的なのに自炊の家計には優しい。
途中で調理終えた彼女らと別のドイツ人ボーイとも話していたら酒が進み過ぎて、ベンチで寝るという、海外で初の自滅をしてしまった。
「そのワイン一人で飲むの?」「そうだよー」「私あなたのこと好きだわ~」という流れも、今から考えると恥ずかしくて死にそう。そして起こしてくれたスタッフ、ありがとう。充電してたノーパソも無事だし、いいホステルだね!
朝食も劇的にいい感じ。このカラフルなシリアル、ミルクと合わないふにゃふにゃさ。
アルゼンチンペソ確保のため、街へ出る。
実際ここで最後だし、レート悪いので残したくないのだが、どうしても必要な理由がある。
ここメンドーサはアルゼンチン随一のワインの産地。アルゼンチン自体、世界第5位くらいの生産地なのだが、メンドーサは国内生産量の70%を占めている。
3000ものワイナリーがあるといい、中には見学や試飲ができるところもあるという。ここを訪れる人の大半の目的はこれ。
ツアー会社で行く方法もあれば、自転車を借りて巡るなんてのもあるが、いずれにせよ実弾(現金)が必要というわけだ。
ということでインフォメーションセンターに行って、後に換金しようと赴いたわけだが、銀行が滅茶苦茶混んでいる。そして両替場も混んでいる。な、何故だ?給料日か何かか?
昨日までとは明らかに客の量が違い、外に行列が出来ている。なんてこった!
結局両替したら12時近くになり、これもう今日は諦めて明日にしようと、スーパーに寄って帰ると、Aちゃんが。
「あと15分で行くよ」
そう、昨日ワイナリー巡り行くよねー的な話の流れで「一緒に行っていい?」「もちろん」みたいになっていたのだ。Sちゃんの人柄もあるだろうが、面倒で絶対一人で行くマンだった私が、旅の最後っ屁的な感じで惜しくなってそういうことを言ったのかもしれない。
ともかく、10時過ぎても起きてこないから今日は行かないもんだと思っていた私だったが、大慌てて準備した。ヨーロピアン時間だな。
メンバーはドイツ組3人とフランス人の男性Jくん?さん?(年齢を最後まではぐらかす乙女みたいな展開になったからね)を加えた5人編成だ。
当初はバスで向かうつもりだったが、インフォセンターで聞いたら、ホテルの位置的に「トラムで行って、近くで自転車借りれば一番早い」ということになったのだが、かじ取り役のJ君もトラムのつもりだったらしく、従う。会話の端々からもわかるが、彼はワインに相当思い入れがあるらしく、本場出身ということも相まって、もうコイツに全部任せとこう、という気持ちになる。
しかしここで突如ドイツボーイは離脱。Sちゃん曰く、どうもバスで行くつもりだったらしく、「トラムよりバスの方が絶対安い」と譲らなかったようだ。
「見たか、これがドイツ人だ。アイツらケチだからな」とJ君。ほう、そういう解釈なのか、欧米では。このJ君、今まで見たことないタイプのフランス人で、冗談大好き、ふざけるの大好きな、超フランク野郎だ。
彼はしきりに彼女たちを「バリローチェでクリスマス過ごそうぜ!」と諦めずに誘い続けており、事あるごとに持ち出すので、新喜劇における定番ギャグみたいになっていて笑ってしまう。
そんなバルタン星人の限りなき挑戦魂的な話を聞きながら、4人になった我々はトラム駅へ。
しかし私は知っていた。トラム乗るには「Red Buss」なる電子カードが必要なことを。
インフォセンターで聞いたところでは売ってなかったので、それも探しながらホテルに戻ったのだが、マジで見かけない。さすがにトラム駅周辺ならどこか売ってるだろ、と辺りを見ていたのだが、キオスコの一つもない。マジかよ、メンドーサ!
いや、っていうかそもそもSUBEがあるだろうがっ!バリローチェでも使えて素敵って、この前褒めたばっかりでしょうが!なに変なとこで独自色出そうとしてんねん!メンドーサマジ面倒さ!
とか言ってもカードは見つからない。SちゃんもAちゃんもスペイン語ペラペラなので、同じく待ている女性に尋ねるものの、この辺りにはないだろう、とのこと。
ちなみにカードは20ペソで、トラム片道8.5ペソ。大した金額じゃないのに変えないと歯痒い(単純な価格だけならバスより安いぜ、ドイツボーイ!)
そんな中、何とこの女性が「4人分くらい私が出すわよ」という。さすがに悪いので払うといっても「大丈夫だから」と譲らない。うーむ、アルゼンチン人、優しいな!
トラムの中でも注目を集める我々。
今までアジア人だから悪目立ちしてるもんだと思っていたが、外国人ってことが一番の理由だった様だ。わからん、ドイツガールズの目立つビジュアルもあるか。ともあれ、かなりたくさんの人が話しかけてきて、彼女らがスペイン語で話すものだからあっという間に車内の中心になってしまった。
こうして終点で降りた我々。だがこの女性の親切はまだ終わっていなかった!
帰りも必要だからとカードの売っている店まで案内してくれたのだ。何ていい人!
病院勤めていうから、もしかしたら懐に余裕があるのかもしれない。貧すれば鈍するの逆ですな。
ということで、日本に帰ったら困っている外国人めっちゃ助けたろ、と思うのであったww
さて、既に昼過ぎだが、さっそくワイナリー(ボデガ)を巡ろう。っていうか暑いな!昨日に輪をかけて暑い!
先程の女性も「ここ最近でちょっとないくらい暑い」と言ってた。ということで、炎天下に自転車はやめよう!と判断し、バスと徒歩を併用する作戦に切り替えていた。
まずは最寄り&無料で見学できるこちらのボデガ。
スペイン語と英語のコースがあるが、ガールズが訳してくれるというので、すぐ始まるスペイン語ツアーに参加。待っている間にサロン見学。
「最高のクリスマスツリーだ!」と興奮するJ君。うん、中身入ってたら間違いなく私もそう思うww
ツアー開始。
こちらのワイナリーは1898年創業。熟成用の樽もサイズが結構あるようで、小型からデカいものまで。あ、これ今はもう使ってない小さいやつね。また聞き解説のため、かなりふわっとした情報になるけどねww
ここでぶどうを絞って
タンクにため、
糖分をアルコールに変化させ、
樽で寝かせる。
6カ月~17年とか言ってたかな。このデカいのは洗うのに2日かかるらしい。
どうでもいいけど背中からでも美人だな、Aちゃん。
箱詰め。マシーン感は見ていて楽しい。この機械特にいい。瓶壊れないように入れる仕組みがもうね、頭の中に「レッツマイトガイン!」が流れ出す感じ。
こうして見学を終えると、お待ちかねの試飲タイム。
雰囲気のある地下でお試し。赤と白それぞれを、楽しみ方含めてレクチャーしてくれる。赤はアルゼンチンワインの基本種、マルベックを使った若いものだ。かなりスパイシーな印象だが、さすがにスーパーで安く買ったものとは違う。渋味がきつめだが、肉と超合いそう。
白は甘めで飲みやすい。
あ、先に言っておきますが、種類かなり飲んだので、記憶が混濁してるんですよね。1つずつメモでもつけておけばよかったが、表現曖昧だったらすんません。
こうして無料なのに試飲までできたツアーは終了。ただ、J君が飲みたいのがあるということで、最初のサロンに戻る。
1杯ずつ、良心的な値段で飲めるのも特徴。ということで、2杯分を4人で分けるという形で試飲。1杯74ペソだったかな。かな、というのは「俺が飲みたいから」とJ君が支払ってくれたからなんだよね。さすがに私は二人だけの時にちょっと出したけど、スマートだよね。
こちらはシラーという品種のもので、彼はこの種が好きらしい。口当たりは先ほどのよりもよかった記憶がある。どうだったかな。こっちの方がおいしかったのは間違いないんだけどな。
このサロンが冷房効いてて(ワイン用の適温レベルだけど)、Wifiもあったので「1日いられるな」とかなりダラダラと過ごしていたが、流石に腹も減ったし行くか、と外へ。
バスで公園辺りまで下って、ちかくのパンチ屋さんへ。
ドリンク付きで50ペソ。具が選べるタイプで、野菜とコーンの野菜不足を少しでも解消しよう作戦。味は語るほどでもないが、こういうジャンクなもの、好き。何でも日本よりボリュームあるのがいいよね。
さて、この時点で16時半を回っていたのだが、インフォメーションセンターに行くと「ワイナリーは17時半に閉まる」というので、J君と私が行きたがっていたところは諦め、近場の所に。
と、途中でJ君が「ケーブル買わなきゃ!」と目の前の店に入る。自由過ぎぃ!
ボデガはこちら。そういや、メンドーサのインフォセンターで勧められたのもここだったな。
ここでは見学+試飲なら120ペソ、試飲だけなら80ペソだという。もう酒だけ飲もうということに。
この4種類をテイスティング。係の姉ちゃんにとっての初めての客だというので盛り上がる(前は別のボデガに勤務していたとか)。英語が話せるためJ君も私もわかりやすくなったのだが、これまでの習慣で、彼女の説明後にSちゃんが同じ内容を話し出した。
「いや、でも、彼女英語話してるけど……」と今日初めてJ君の困惑した表情を見られたのはよかった。笑いに包まれたが、彼女の優しさがわかる一幕で和む。もう一度同じ過ちを繰り返してたけど。
さて、肝心の味だが、左から順に飲んでいく。1杯目は記憶に残っていないが、2杯目はかなり癖の強い香りで、一瞬ウイスキーを思い起こさせたが、オークの樽で寝かせたかららしい。納得。
次の1杯も同じくオークの樽も使っている様だが、こちらの方がすっきりと飲みやすく仕上げている。
最後の白はお姉さんが好きだという一品。かなり甘めで、微発泡している感じ。
しかしさすがは欧米人、「私的にはイマイチ」とはっきり言う。
悲しそうなお姉さんに「僕は好きだよ」とJ君。お前、甘いの嫌いって言ってたじゃねぇか。
しばらくしたらこっそり「うわ、甘っ!」みたいなリアクションしていた。私が言うのもなんですが、お調子者だ。
まぁ、「日本の女の子は好きだと思うよ」という我が言葉には偽りがない。というか私お酒なら大体いいです。あの、アイスランドで飲んだアイツ、アイツだけは許せねぇ。
しかしすべてマルベック種だったが、ここまで違うとは。やはりワインは奥が深いですなぁ。
1杯の量が結構あるので、かなり満足できる。というか、つまみほしい。誰かが「3つも周ればベロベロになる」と言っていたが、それも理解できるサービスっぷりだ。だって80ペソって500円くらいですからね。ボトルだってそんな安い奴じゃないから、確実にお得。これはイイ!でも酔っぱらって自転車乗っても大丈夫なのか、アルゼンチンは。
こうして楽しい時間はあっという間に過ぎ、メンドーサに戻る。宿でワインパーティをやろう、という流れになり、スーパーと、ワイナリーに行く。事前にJ君が押さえておきたいボトルを調べ、それが売っているであろう場所を特定していたのだ。さすがはワインの国の男。頼りになる。
バスチケット買うために、ワイナリー行く前にガールズが離脱。ターミナル閉まる時間が迫ってそうだったので、ホテルに戻るだけの私が「(買い出しした)荷物持つよ」といったが、頑として譲らなかった。これは自分たちの水だし、分担だから、という。
うむ、とかく欧米人男性のレディファーストは取りざたされることが多いが、女性たちのこういうところも日本とは違うのかもしれない。ま、どっちも個人差あるだろうけど。
そういえば必ず「あなたはどうしたい?」と聞かれまくったな。流れに任せればOKだったのだが(だってワイン大国マンいるし)、日本人は自己主張しないと思われ過ぎるのもいかんよね。
さて、宿で諸々準備整えた結果がこちら。
すっごーいでしょ!クレバーでしょ!天っ才でしょ!
絶対一人じゃできねぇ!良かったー!
サラミと生ハム、チーズ3種にパン。最高ですね。特に自分で切るタイプのサラミとブルーチーズのベストマッチ!がヤバい。本当にうまい。
そしてワイン。さすがはフランス人。どれもハズレがない。個人的には一番右が好きかな。
こうして我々のユニット名が「マルベック・テイスターズ」と定まったところで、お開き!
個人的に行こうと思っていたボデガは行けなかったが、やはりサンバルカンのED通り、1人よりも2人、2人よりも3人がいいという奴で、楽しい時間になった。行く先々で人数が増やせるのが、1人旅の魅力だと思い知れた。よかったよかった。
さて、明日は……ボデガはもういいけど、することないなww
残り日数もあとわずか!悔いを残さず突っ走るぜ!
魅惑の浪漫が、我を呼ぶ!