第三百十八話 Bの贈り物 / 標高3650mの対決
出立137日目(通算387日目) ボリビア4日目 ラパス2日目
この宿は朝食が豪華と評判。
食堂の席空いてなかったからテラスに。あとパンケーキとフレッシュジュースもあったが、たしかに、パンとコーヒーだけみたいなところも多い状況でこれはすごいかもしれない。
暑くて下に降りたけど。このあとドイツ人女性と少し話したくらい。人が多すぎるのも面倒な話だと思った。
さて、せっかく近いので、先にバスのチケットを取ってチェックアウト。
しかしバス移動の手間を考えるとここの方がいい気もする。高いけどな。ビールで10ボリ引いて、飯で13ボリくらい引くと32ボリで、ドミだからアレだが都会価格と考えるとそこまで高価でもない気がするし。
しかし、俺は、移動する!
こうして街の中央あたりまでやって来た。泊まっていたところの系列の宿で、オープンしたて。泊まっていた2人は出たようで、12人ドミに1人だけ&お客3号。つまりV3かミッチーだな。
人が少ないのもあって落ち着く。残りの日数を考えて、調べ物をすると、昼過ぎに宿を出た。
すり鉢状の街の上の方に、「El Alto」という別の街がある。昨日通ってきたところだ。朝の写真にもあった、ケーブルカーが引かれた場所で、貧困層が多くなっていくエリアだが、ここで毎週木曜日と日曜日に「泥棒市」と呼ばれる市場が立つというので、出掛けてみた。
ケーブルカーのレッドがそこへ向かう。3ボリと庶民の味方。
それもそのはず、コロンビアのメデジンにあったケーブルカーを参考に、街の治安改善と経済発展を目的に敷かれたもので、結構近代的な造りだ。
街並み。手前は共同墓地の様だ。かなりの数があった。ここもやはり上に向かうほど日干し煉瓦やトタンの屋根が増えていく。
10分くらいか。頂上へ。途中から雨が降り出したが、若干入り込んでくるケーブルカー内。通気口からだろうが、苦笑い。
さて、駅を出るともう目の前見渡す限りのテント。
かなりの数の店があり、その間を多くの人が行き交う。スリとかには気を付けた方がいいだろうな。
昼はこの辺で食べようと思っていたので、まずは腹ごしらえ。
チチャロン(豚を油で揚げたヤツ)10ボリ。下はマテ(コーン)だ。この部分はショートパスタや芋にもできるようだ。南米入ってから多いのだが、聞き返したのにそれが出てきちゃう問題。
味はまぁ、普通。マズくしようがないといえばそうなんだが、寒いので冷えたらマズそう。
さて、歩くの再開!
これは……車のパーツか。それにしても、すごいな。
泥棒市の所以はその名の通り、どこからか盗んできたものが並んでいる、とされるから。これも分捕って来てバラしたのかもしれない。
ラパスでスられたものが、ここに来たら見つかった、なんて話があるくらいだ。この人混みでスマホ盗られても、もしかしたらその日のうちに回収できるかもしれない。
勿論、服や日用品、民芸品やDVD、電子機器、靴に食べ物にと、ウドの街よろしく、質を問わなきゃ何でもそろう。
たまに見かけるミリタリーの店。まさか横流しとかは……ないよな!
端から端まで行くのを断念するレベルの広さ。チチャロンでは足りなかったので、他の店にも。
サルチパパス、5ボリ。
南米でよく見かける庶民のおやつサルチパパスは、ソーセージ(サルチ)をフライドポテト(パパス)にのせた一品。ここでは「ご飯いる?」と聞かれて耳を疑ったが、どうもこういうことらしい。ま、そりゃ有り得ることだが、なんか面白いなぁ。
さて、この街にはもう一個目的があって、その時間まではまだあるのでどうしたもんかと思っていたが、そういえばパンツが一つヤバいな、と思い出し、せっかくだからダサいのを見つけて買おう!と決めて巡り出す。ゴムがダルダルでね。引っ掛かるものがあるはずなのに、ズボンと一緒にズリ落ちるんで。
色々巡ったが、サイズがね、なんかXL以上が多い。まぁ、そうなのかな。と思いつつ、買ったのがこれ。
うわっ!ダサい!チェンジ、リオパルドーン!って叫びたくなる。
そして街の外れにあったのが、チェ・ゲバラの像。どうも廃材の鉄を寄せ集めて作った様だ。完成度高いな、おい。ボリビア土産のTシャツにもゲバラモチーフが結構あるのだが、理由は簡単。
キューバ革命の後も中南米独立の希望に燃えるゲバラは、富と役職を辞して、ここボリビアに潜入し、再びゲリラとしての道を歩む。しかし、志半ばで捕らわれ、殺されてしまう。39歳の若さであった。
ここボリビアは、革命家チェ・ゲバラ終焉の地。遺骨は97年まで発見されなかったが、それ以降、その地への観光ツアーも存在している様だ。が、金額を見て諦めるレベルの高さ。
何にしても、キューバで追いかけ続けた彼の終焉の国に来られたことは、大変に意味があることだ。
さて、向かうは「チョリータレスリング」と言われるイベント。
チョリータとはインディヘナの民族衣装で、まぁ、後で画像載せるので見ればわかりますが、それを着た女性のプロレスが見られるのだ。
大学時代にプロレスサークルの試合見に行ってたけど、あれは楽しかったなぁ。というのもあったので。
日曜日しかないと聞いていたので諦めていたのだが、宿にポスターがあって木曜日もあることが判明。よっしゃラッキー!
取りあえずいつも開かれると噂の会場前まで移動。ちょっと甘いものをと、屋台に。
ゼリーの上に、チーズクリームみたいなのがのったスイーツ、2.5ボリ。ペルーでも何ならその前でも見たかもしれない、定番系だが、手は出してなかったんだよね。味は上の説明で十分。他にもバリエーションがあるけど、結構腹いっぱいや。
そこのお母さんに聞いたら「日曜日だけだよー」とのこと。しかし事前に調べていた私は、もう一か所、会場があることを知っていたし、宿の兄ちゃんにも確認していたからあわてない。
更に進まなければいけないが、日も高いし人も多いから大丈夫だろう。
こんな感じでマーケットになっている。ここは更に庶民向けだ。観光客の姿も全く見かけない。もとの会場から2kmはないくらいで到着。ってかよくみると、Maps.meにも載ってる。
覗いてみると、リング設営中だった。しかし始まる時間が不明。宿の兄ちゃんは17時半くらいに宿をピックアップするツアーがあるといってたから、それ以降だろうが、まだ1時間くらいある。が、歩き疲れたので隣の公園に座り、今後のプラントか練っていた。若干ビビりながら。
さて、変なおっさんに話しかけられたくらいで、あとは関係者の人に会え、18時半くらいから始まるのがわかった。別の人からもチケットを買え、入場。50ボリ。
早めに行ったことが功を奏し、リングの真ん前に陣取れた。なお、このチケット、トイレ2回分とお菓子とお土産が付くようだ。
19時半からと思っていたら、19時に審判が入ってきた。始まるのか?ゾロゾロと集まった人らは観光客ばかりで、おそらくツアーの連中だろう。慌ててスナックを取りに行くと、アレ?宿の兄ちゃんやんけ!
そうか。規模のデカい宿だと思っていたが、どうやらこの会場の仕切りは観光客用の宿(もしかしたら泊まったところ?)だな。通りで地元民いないわけだ!
しかし、ツアーの話だけ聞いて自分で来たという状況、ちょっと気まずい。
ポップコーンとジュース、おみやげ。ポスカと缶バッジも選べたが、前職の癖からか原価が透けて見えるものは避ける傾向のある私。ただこれもチョリータ感はあるけどプロレス感はないよね。
あと塩は自分でかけないといけなかったっぽいんだが、甲斐甲斐しく兄ちゃんが持って来てくれた&試合始まりそうだったから、すぐ席戻ってしまった。でも塩気はなきゃないでいいんだな、と知った次第。うどんのコシと同じだね。
さて、試合開始だ。まずは前座的に男性レスラーの試合!チョリータの試合を見に来たわけだが、もちろん男子だって大歓迎だ。
一進一退の攻防の末、こんな感じでこっちの男性の勝利。リング外の戦いもあり、打ちっぱなしのコンクリートなのにダイブした時は、こんな観光客相手の前座の商売なのに体を張る彼らに敬意を表したくなった。
さて、続いてはメインのチョリータプロレスだ。
マスクマンの若い女性とチョリータ全開の少し年上の女性の試合。日本人の間では「おばちゃんプロレス=オバプロ」というセンスの欠片もない通称(なので使いません)で呼ばれているこの興業、若い子も出るのだ。
しかしこの赤い女性、堂々とヌンチャク装備!そして身体検査もおざなりでレフリーが完全にグルという展開!実況は完全にスペイン語だが、流石は体で見せるプロ。言語が通じなくても状況がすべて理解できる。ゼナ先輩やってる岩田さんみたいなもんやね。
状況を察した観客からは笑いが起こり、先程の男子の試合時のレフリーが抗議するも、試合は開始。
最初は普通に応酬が続くが、途中から凶器攻撃とレフリーまで戦いに加わる展開に!ジャック兄さんVSナックル星人&ブラックキングみたいやんけ!
あかん!姉ちゃん頑張れ!会場は完全にこんな流れに。
結構ダイナミックな技も飛び出し、レフリーもろとも抑え込んだ姉ちゃんの勝利!会場フィーバー!
続いての試合へ。
この入場時の舞も結構見もの(これはその前の試合のだけど)。
チョリータ本来はこちらなんだろうなぁ。
この試合も若い子とおばさまの試合。どうもそういう形式の様だが、何やら現実世界の構図みたいのが一瞬見えた。
先程のレフリーがまたやってくるが、大ブーイング。客と揉めている間にもう一人が入って来て、試合を始める。
悪徳レフリーもいないからか、試合は通常運行。しかし客のコーラを奪ったおばさまが毒霧攻撃!レフリーにも!
いいですねぇ、飽きさせません!場外乱闘も技もかなり練習の後が見られる。プロレスなので進行はある程度あるけど、よく出来ている。
何だかんだ第2試合も若い子の勝利で幕を閉じた。
そして最終試合。
青い若い子はまだ慣れていないような、たどたどしさが見える一方、この巨漢の女性(変な話だが)は超ベテラン感満載。入場の舞でも客の一人の手を取って、最後に熱烈なキスをかます。うわぁ、ファーストキスならトラウマだなぁ……
レフリーはまたしても悪徳のおじさん。まともなレフリーを蹴り出して、試合を始めてしまう。
やはり2人がかりでリンチ!『炎のキン肉マン』のサビが頭に流れる状態!ルール無視の悪の超人!まさしく超人感のあるおば様や!
そこに見かねた別の若い子が妨害キック!さぁお遊びはここまでだ!とばかりの登場に、会場はヒートアップ!
最後は2人で悪行超人組を抑え込んだ!
いやー、全試合の模様を書いてしまうくらい面白かった!試合後は記念撮影タイムだ。腕が鳴るぜ!
日本感を出した歌舞伎のポーズと、
技掛けられてるポーズ。おばさま、嫌ですわ、地味にキマってる!
こうして満足して会場を出る私。ツアー組はバスで帰る様だ。これだと全部込みで90ソル。
まぁ、20時過ぎのエルアルト歩いて帰るより安全……ああっ!どうしよう!
この会場での試合を見学した他人様のブログでは「同じ様にケーブルカーで帰る人の波に乗ったので、特に危険はなかったです♪」みたいな感じだったが、これはアレか?いやしかし、他にも別途来た奴ら居たよな……見回すと、女子と男子の混合グループ。
男「ケーブルカーまで歩く?」
女「危険だから嫌!タクシー絶対拾う!」
ですよねー!同じ状況ならそう言うわ!
夜一人で歩いていたら襲われた的な外務省のページを思い出すが、まだ人通りも多い。ヤバいのは路地に一人とかのときが多いだろうから、逆に行ける!てかそもそもタクシー見かけねぇ!ということで歩きはじめる。
すぐに大通りに。まだまだ市場が開かれ、市民は多い。いかにもな観光客的振る舞いをしなければ目立たないだろう。例えば、こうやって写真を撮るみたいな。
途中でまたアルパカのミイラを売る商店がいくつか並んでいた。ということは、観光客向けの何かではなく、ガチで何かに使っているというわけだ。何だろうな。
ケーブルカー周辺も、まだ店を出しているところ、撤収する人で、それなりに人がいた。
とはいえ、逆に言えば泥棒市の無い日にこの辺を一人で歩いたら、流石にヤバい気がする。
こうして無事に乗り込んだ私。
ケーブルカーからの夜景。しかし広い街だな、全然おさまらないぞ!
下に降りてからも基本人の多い道を選び、宿まで歩く。21時くらいだ。
途中でハンバーガー購入。ばあちゃんのやっている店で、5ボリ。途中で来たおばさまも交えて、少し話す。つってもスペイン語だからわかったようなわからんようなだが。味はね、そらうまいですわ。ちょっと塩の振り方あれでしたから、その影響あったけど。
さて、宿に戻ってシャワーを浴びると、兄ちゃんも戻ってきた。本当に今日は客私一人&それでも「朝食、夜の1ドリンク付きで49ボリ」のためにバーが開く。なんかありがとう!
まだサーバーがないのでカクテルだ。名前忘れたけど、ジントニック系。
兄ちゃんと別のスタッフの姉ちゃん、その知人の男性という感じで飲む。
兄ちゃんコロンビア人らしい。行った街の話とかビールの話で盛り上がる。
流石に気を遣って、そして初めて開けたろうと思って、ジャックダニエルを頼む。35→30ボリに。結局高くついてんじゃねぇかって感じだが、オープンのお祝いだし、久しぶりのウイスキーは旨い。
そこでピザを頼もうとなって、隣のピザ屋に注文。1人15ボリ。写真忘れたけど、魚介やマッシュルームも乗って、スゲー普通にうまいピザだった。普通にうまいものが食えることが衝撃。まぁ、値段はしたけどな!
こうして話し込みながら、この日は一人ドミトリーで眠るのだった。でも使う人間少ないから、Wifi早くてよかったわ。ようやくUPできたし。
さて、明日はちょっと郊外へ!
輝く自然が、我を呼ぶ!