第三百十三話 Pのボレロ / クイは残さず
出立128~30日目(通算378~80日目)ペルー24~6日目 マチュピチュ3日目~クスコ4~6日目
ノロノロと起き出した私だったが、宿が9時チェックアウトだと言われ、慌てて荷物をまとめて出る。流石に集合時間にはまだ早いので、町中をブラブラする。
遺跡へ向かう道にモニュメント。気付かなかったなぁ。丁度塗っている所の様だ。
ゴミ箱がカエルで何かかわいい。溜まったごみを捨てるときはひっくり返して口から出すので、それも何かかわいい。
温泉街っぽい、線路沿いの景色。左隅に、インカの3つの神、コンドル、ピューマ、ヘビを連れた初代皇帝の姿が。
おっと、ここまで「初代皇帝」とお茶を濁してきたが、そろそろ彼の紹介をしよう。
彼の名は「マンコ・カパック」。
ここまで言えば、なぜひた隠しにしてきたかわかるだろう。
名前を知ったのは大学だったか、高校だったか。そりゃあもう、何の冗談かと思ったもんだが、南米では知らぬ者はいないだろう。クスコのアルマス広場や、マチュピチュの広場では、こんこんと湧き出る泉の中央に黄金のマンコ・カパック。それだけではない。街のそこかしこにマンコ・カパックの像があり、Tシャツや商品にもマンコ・カパック。
全世界の女子の皆さんはこの名前を覚えてもらい、声に出してほしい。それほど偉大な王なのだから。
これまで見てきたような広大な帝国を築いてきたのだから、やはりマンコ・カパックが生み出すものは偉大だなぁ。
あ、ちなみに初代から7代くらいは実在するか怪しい様です。どこも似たようなもんですな!
話が大分それたが、朝昼兼用でメルカドでお食事する。
スープの後に出てきたのはこちら、「Revuelto de Vainita」。卵で炒った煮物という感じの優しい味で、大変によろしい。
広場に戻って時間を潰していると、T君がやって来た。集合時間の違う彼はこれから食事の様だ。前日にはアルパカの肉を食べたらしい。いいなぁ。
さて、名残惜しいが、流石に足の疲れもあるので、集合時間の3時間前に歩きはじめよう!
この日は快晴で、昨日晴れろよ、という気分最高の状況のため、ハイキングにはもってこい。旅路については詳しくは書かない。
いい感じの景色だ。この奥の山に注目。
ハイ拡大。おそらくこの尾根の辺りがマチュピチュ。こんだけ開けた状況でも判然としないのだから、見つからないのも納得。むしろハイラムさんマジスゲー。
意外にも平地では筋肉痛の影響はなく、2時間ちょっとで着いてしまった。なんだろう。こう、体がおひとり様を受け入れて進化してきたというか、もうそれでいいでしょ、みたいな適応が進んだ状態―身勝手の極意の兆しが……ああ!そうか!これがインカの目覚めか!
予定時間まで1時間あるので、フルーツ齧ったり写真整理して時間潰す。ぽつぽつ人が集まり始め、結局15:15過ぎに出発。2時間近く待っちまったぜ……。
さて、来た道を戻っていくわけだが、最初のうちは景観が望めるが、日が暮れると街灯なんてものはないため、完全な暗闇。眠ったり音楽を聞いたりで時を過ごす。
20時台に着くようなことを聞いていたが、結局22時前に広場で解散。まぁ行きの時間考えればさもありなんだよな。なんで帰り2時間も短い予定だったんだよ。
ほとんどの人がこの時間にマチュピチュから帰るからだろうか。多くの飲食店が普通に営業していたが、私はポップコーンとビールを買って宿に戻った。
地獄の坂道を息を切らして登り、ベッドに腰掛けると、大きなため息が出る。大きな目的が一つ、終わったのだ。その名残を、夜景を眺める屋上での晩酌で惜しむのだった。
翌日。さすがに筋肉痛があるため、2日程休息に当てることにし、クスコから出るもう一つの面白そうなツアーの、良さげな会社を探して回る。
途中、お昼ご飯にしようと歩いていたら、衝撃の価格が目に留まる。3.5ソルだ!?
見間違いだと思ったが、店のオヤジの呼び込みで、入る。暗い店内に地元民が大量だ。これは挑むしかない。
スープは多少少ないかもしれないが、きちんと具が入っていて、メインはこのポジョ・ドラード。うむ。味も特に問題ないし、後々腹も下らなかった。メルカドより安いが、メルカドより満足できるじゃないか!やるじゃん!
場所は以前の5ソルの店と同じ、おいしいパン屋さんのあるChoquechaca通りだぞ!
さて、民芸品市場に再び出掛けてほしいものを探したが、疲れてきたので一旦寝かし、目を付けていたカフェへ。
「Atiq Cafe」はAvenida el Solを民芸品市場の手前まで下ったところにある、ホテル併設のレストランだが、ここのケーキセットが10ソルだというのだ。
こちらがそれ。パッションフルーツチーズケーキとアメリカン。パッションフルーツの酸味と生クリームの甘さがレアチーズケーキの生地とベストマッチ!はっきり言ってめっちゃうまい。以前のアルマス広場横の所より、明らかにクオリティが高い。セントロから離れているから人も少ないし!
いやー、素晴らしかった。
宿に戻ってT君らと話して時間を潰し、夕飯は彼とちょっといいものを食べに、いいレストランに向かう。
ガーリックトーストのつきだし。ソース2種(ガーリックと辛いヤツ)つきで、この時点でうまい。他の店より安いけど大丈夫か?と思っていたが、これは期待できそうだ。
食前酒ということで「ピスコサワー」が。
ピスコはペルーを代表する蒸留酒で、これにレモンや卵白、砂糖だかシロップなどを加えて作ったカクテルがこちらだ。カルピスの様なすっきりとした味わいと、メレンゲの様な泡が心地よい。
そしてキヌアのスープ。これは比較的ベーシックだが、丁寧な作り。T君はサラダにしたが、結構なボリュームの様だ。
そして、ついにメインの登場だ。
はい、出ました、クイ!
日本名テンジクネズミ。モルモットの原種と言われ、ペルーでは貴重なたんぱく源として、昔から親しまれてきたものだ。
思い返せば、コロンビアの頃から見かけていたこれを、ついに食す時が来たのだ。
「Cuy al Hoy」だったか。要は窯で丸焼きにするわけだ。もとの可愛さとこの見た目のグロさで、よく考えると引いてしまうのだが、そこはよく考えないようにしてナイフを入れる。肉がww伸びるww
味はチキンを油っぽくした感じで、そこに加えて獣臭さもある。こちらでは「ハレの日」に」食べるごちそうというポジション。まぁ鰻みたいなもんだな。最初は微妙な反応だったT君も「慣れればおいしいですね」とコメント。
うむ、時折目に入る顔の辺で一瞬ハッとするが、それを除けば充分にうまい。まぁ、1回食えば、鶏肉でいいかな。
あとはフルーツサラダと飲み物が付き、35ソル。他だと60ソルと言われているクイだが、正直半身でいい。
お高い食事は一人ではなかなか手が出ないので、大変に満足だ。
一応食べ終わりも撮ってみた。
うん、脊椎動物だねww
帰りにスーパーにより、ピスコを購入。今日はT君と二人で晩酌だ。話が弾み、少し飲み過ぎてしまった……。
翌日、朝食後にT君が、バックパックの奥に入れていたサブ財布からお金が抜き取られていることに気付く。
昨日、ドミには日本人3人の他、イスラエル人と自称ポーランド人が一瞬いた。この自称ポーランド人(もうこの時点で意味不明だが、英語が通じているのか全く分からなかった)が挙動言動全て怪しい奴だったので、こいつではないか、という結論に。
こいつは昼間いたが、結局夜にはいなくなっていた。おそらく誰もいない時間に物色していったのだろう、と。
他人事ながら一気にテンションが下がった。もちろん、今も用心はしているが、こういう事態がドミトリーは起きやすいのだ。今後向かうボリビアは更にその辺の事情が悪いという。身が引き締まる思いがした。
そんなT君と昨日の店の隣にある、これまた3.5ソルの食堂に。
スープが出て、メインはこちら、マタスキータ。これまたすごい名前だが、辛くないカレーみたいな感じ。マンコ・カパックのお膝元でマタスキータ。
店のお母さんに「夜も来なさい」と言われたので、夜もやっていることが分かった。
T君と別れた私はようやく民芸品売り場で戦利品を入手した。
途中で見かけた壁画。なかなかに味のある作品だ。クスコは教会も多いが、インカ周りのアートも多い気がする。
昨日のカフェはやっていなかったので宿に戻り、夕食の時間にT君と再び向かう。
今まで足を延ばさなかったが、この通り、夜もほとんどの店がやっている!つまり3.5~5ソルで食えるのだ!くーっ、いいね!
チュレータなので、豚肉焼いたもの。昼とはメニューが変わるのもうれしい。
赤いのはビーツか?ちょい甘。
さて、今日ボリビアへ向けて旅立つT君を、一杯やって送り出した。
タクシーを呼んだが、待てど暮らせど来なくて焦ったが、戻ってこないところを見ると、無事だったのだろう。
私も明日は早朝からのツアーだ。3時半集合なので、マジで早朝。どうなる第314話!?
古代の夢が、我を呼ぶ!