第二百五十二話 C 32歳の革命 / やさしさに包まれたなら
出立33~7日目(通算283~7日目)キューバ8~12日目 (シエンフエゴス~)トリニダー1~5日目
プラヤ・ヒロンの配給所前から10時頃発で乗ったカミオン。3CUCでシエンフエゴスまで2時間半くらいかな。
地元民の中に一人だけアジア人。しかし好奇の目もあまりない。カミオンは個体差が激しいらしく、きちんとした座席のものもあれば、護送車みたいのもある。今回は護送車。
始めに言っておくが、暑い。走っていればいいが、あとは暑い。
しかし地元の人々の優しさなんかも見れる。子どもが乗ってくると、座っている大人が自分の膝の上に乗せたり、母親の荷物を預かったり、もちろん席を譲ったり。最後のはともかく、日本じゃなかなかやらないものもあるよね。
下りてトリニダー行のカミオンを探すが、複数人に聞いたところ、「今日はない」と言われる。これが本当か嘘か、かなり判断は難しいが、まぁもう暑いんで、「乗合タクシーかコレクティーボがある」と言って兄ちゃんが連れて行ったところで、いわゆる白タクに乗る。
警察がどうこうと言っていたので、おそらく許可取ってないんだな……。
トリニダーまで7CUC。10と言われていたが、ここまでは下げられた。
途中で親子を乗せたので狭くなったが、彼らはもっと安いだろう。しかしね、我々はこの貧しい国に外貨を落としていくことも大切だと思うわけです、値切ったけれども。
カミオンみたいなのは現地人でない(把握していない人もいるが)と、どこからいつ出るのかわからない。事前にバッチリネットで行った人の記事を押さえておくか、余裕とスペイン語に自信のある人向けの手段だと思う。
こうして辿り着いたトリニダー。暑い。暑すぎる……。客引きを振り切って、目当ての宿を一心不乱に目指す。
「レオとヤミの家」という、日本人&韓国人御用達の宿だ。街の中央の道を外れまで歩く。安さが魅力で飯もうまいらしい。キューバ飯はハズレが怖いからな。
オーナー夫婦不在の中、取りあえず部屋に入ると、ハバナで「サンディアゴまでカミオンで行きます」と旅立っていったS君が一人寝ていた。
彼の場合、サンディアゴまで20CUC(ビアスールバスだと51CUC)で行け、雨上がりの夜だったから涼しかったが、以降の移動は最悪だった。ビアスールも使った区間はバスが古くてダメだった、とのことだ。
うーむ、やはりこの国では移動がネックだな。
小腹を満たすために人民サンドを食ったが、もうすぐ帰りたくなるくらい暑い。
夕方18時を待って街を散策。
トリニダーは黄金を求めたディエゴ・デ・ベラスケスがこの地を気に入り、今よりも海岸寄りに1514年ごろに築かれた。しかし海賊の襲撃が相次ぎ、現在の山中に移された。街はサトウキビのプランテーションと奴隷売買の中心地として発展。19世紀の奴隷禁止まで続き、以降は徐々に衰退した。
スペイン統治下の街らしいコロニアルな感じが特徴で、メキシコの光景を思い出す。
「Iglesia Mayor Santisima Trinidad」
街の中央、マヨール広場に建つ、1892年の教会。
革命記念博物館は0.25CUCのモチーフになった角度からパシャリ。夕方17時までは入れるが、殺人光線を避けてこの日は諦めた。
町中のレストランやバーでは音楽が演奏されていて、それを聞くだけでも楽しい。ハバナよりも身近な感じ。観光客がほとんどだけど。
町はずれの朽ちた教会「Ermita de Santa Ana」かな。かな、というのはキューバはたまにGPSが効かない。やはり反米の影響が……。
観光客はほとんどなし。試しに0.25CUCっぽく撮ってみる。
街自体は非常に小さく、すぐに歩いてみて回れる。まぁ、日中は嫌だけどな。
宿の向かいの家族が写真撮って、と言ってきた。宿の場所を教えてくれたり、親切な人たちだが、やはりこの街にも貧富の差はある様だ。
宿に戻るとレオとヤミがおり、夕食をお願いする。ランゴスタも10CUCで頼めるが、この間食べたので、チキンをお願いする。
まずはご飯に豆のスープ「ポターヘ・デ・フリホーレス」。甘くないおしるこ的なイメージで、肉とか使ってるんだろうな。この時点ですでに旨い。噂に違わず旨い。
バナナを揚げたものや、アボカド、トマトスライスも出る。ああ、野菜!なんかこう、体が求めていた味がする!人民系だと野菜が不足するからな……。
そしてチキンはカラッと揚げたタイプ。これも旨い。マンゴージュースも供され、おそらく今まで(人生ね)飲んだ中で一番うまい。インスタ女子ならこれだけでテンション上がるレベル。日本だったら800円とか平気でしそう。
Sくんはランゴスタを食べ、すっかりご満悦。本体自体はヒロンの方がデカくて良かったかな。でも、調理の技術はヤミさん、相当なもんだ。
最後にコーヒーまで出た。娘さんたちが甲斐甲斐しく給仕してくれ、ありがたい。20時から食べ始めたが、彼らはいつ食べてたのだろう……。
食休みをし、外出。「LA CANCHANCHARA」というバーへ。
ここでは名物の「カンチャンチャラ」という酒が飲める。アグラルデンテというサトウキビ原料のラムの様な酒に、蜂蜜、レモン、水を加えたカクテル。
蜂蜜の量が凄まじく、後半に行くほど悲劇的に甘い。
奥ではバンドの演奏もあり、「Yesterday」とか、キューバミュージックとかが歌われていた。
翌日は涼しいうちの散策がいいだろう、とバラバラに出かける。S君は物々しいカメラを持っており、「一日の内で美しいのは夕暮れと明け方」という哲学を持っていたが。この街ではそれくらいのタイミングしか出掛ける隙がない、ともいえる。
まだ人も少なく、気温も低い。
途中から一人になり、町はずれまで足を延ばすと、朽ちた教会が。
犬もたくさん屯しており、はや店を始めた土産物店も。
その先には洞窟バー「Disco Ayala」が。22時~3時という時間にやっているらしい。今は暗い店内がぼんやり見える程度。
この先が山道につながっており、街を一望できるかなーと軽い気持ちで登り始めたが、よく考えれば結構な高さだったと思い出す。
いやしかし!頭の中では明石チーフが「ちょっとした冒険だな」「アタック」を繰り返し、「冒険者ON THE DREAM」が流れ出す。
日本の山の民として、引き返すわけにはいかん!男が、男が廃る!!
ああーいい眺め。
ぶっちゃけ途中の方が革命博物館とか見えたけどな!
まぁ、20~30分くらいなので、朝の涼しいうちにどうぞ。
朝は鉄道が出るというので、S君の待つであろう駅へ。
かつては蒸気機関車だったが、修理に入っているらしく、今回も普通の見た目。まぁ、普通って程普通でもないな。残念。
宿に戻ると次の街へ発つS君を待つ車が。宿でチャーターすると、サンタクララまで15CUCだそうだ。ビアスールだと8だが、しばらくいっぱいとか。やはり早めに動くべきだな。
オフィスに向かうと長蛇の列が。予定に会わなかった人々に声を掛ける、タクシーとコレクティーボの業者。協定でもあるのか、基本的に全員同じ額だ。
私は時間に余裕があるため、3日後のバスを予約。ってことは、これからビアスールを使うなら、街に着いてすぐを狙わないとな。
続いて、街のシンボル・革命博物館へ。
正式には「Museo Nacional de la Lucha Contra Bandidos」で賊軍討伐博物館となる。バティスタ政権打倒時にフィデルと共に戦って命を落とした革命軍のメンバーの写真や遺品を中心に展示。花形のチェやカミーロはチラリと触れる程度で、フィデルとメンバーの写真が多い。
まぁ、基本的にスペイン語表記なので、細かい死因とかよくわからんかったけど、写真の無い人は似顔絵を以って展示。これによって前政権の非道とキューバ革命並びに現政権支持を訴える狙いがあるとか。それで入場料1CUC、国民は2CUPで入れるわけか。
塔の部分は街を一望できる。コロニアルな街並みや、洗濯物などの生活の様子も見て取れる。
暑いし見るものもないので宿に向かい、途中の人民スタンドで人民サンド、ソーセージ。
二つに折って挟むという、ストレートな見た目がウケる。これにジュース(激甘オレンジ)を付けて8CUP(約35円)。
屋内ならそれなりに過ごせるので、一休みし、6時頃、再び中心へ。
今日はイマイチ演奏がやっていないので、近くの売店でカクテルを購入。
ピニャコリーダ 1.5CUC。これなら毎日手が出せる価格だな。
宿に戻り、食事はコリアン3人と。今日は牛さんのトマト煮。少々固いが、おいしい。スープはパスタ入りだが、相変わらずの硬さだ。そういう仕様なのか?
一人独学でほぼ完全に日本語をしゃべれる奴がいて、脅威を感じる。韓国語の発音がうまいとほめられたので勉強しようかな……いかん!スペイン語が先だ!!
盛り上がっているところにハバナから来た日本人&韓国人のカップル―ではないだろうが―が到着。ハバナの3つの日韓宿の話やキューバの話に。女の子は大変だね。
「中国ってどうなんだろう……って思ってたけど、相対的に評価が上がった。あの国の人間は親切だ!」とまでなる始末。今のところそこまでクソ野郎に会ってないから、何とも言えないなぁ。まぁ、運がいいのかもだけど。
そんな訳で計6人のアジア人が連れ立って、洞窟ディスコこと「Disco Ayala」を目指す。一人じゃ絶対行かないから、渡りに船だ。
昼間の記憶を頼りに向かうと、入り口前には長蛇の列が!そして並んでいる列に平然と割り込むキューバ人。このヘナテーロがっ!!
バレた奴は入り口で弾き飛ばされてましたが(ちゃんとしてるな)、朝見たのは単なるエントランスで、そこからどんどん降りていくと……
おお!
おお!ゴルゴムの秘密基地かっ!?
5CUC1ドリンク付きの空間には、スクリーン3つが並び、広さも小学校の体育館の半分くらいはあるだろうか。広い。そして暑い!
クラブみたいな感じで、ドンドコドンドコ、それでいいのかってくらい欧米音楽、ちょっとキューバとか中南米、って感じ。事前にステップをレオから習っていたが、ちょっつしか使わなかった。
2時前には店を出たが、確か23時~3時とかやってるんだよね。欧米人多かったけど、アイツらはこういうの好きそうだなー。実は苦手なんだけど。
ここに向かう途中の街頭や店で、行きと終わりの客を狙ったのか店が乱立。しかも1杯1CUCだからいい方法だと思う。キューバ人、やるな!
翌日コリアンたちが出るから朝食を一緒にしよう、と言われて初参戦。
フルーツがたくさんなところが見どころの洋食だ。3CUC。
彼らを見送って日韓の架け橋を作り、街の散策へ。
脇道入ったところの公園では、楽団が演奏中。日曜日だからかな。
グルグル回っても同じことなので、こういうときはジードだ。
意を決して5km先の海を徒歩で目指す。暇だからな!と思っていたが、思った以上に遮るものがない!これは苦しい!そもそもこんな暑い国で歩いて5kmとか頭悪すぎるだろ、誰やねんそのアホ。
しかし拾う神もある様で、雲と風が出てきて、終いには馬車のおっちゃんが「乗れよ」と乗せてくれた。
馬も歳なのか、相当ゆっくりで、おっちゃんの檄が飛ぶ。そういえば、よくキューバ人同士で乗せている光景を見るなぁ。貧富の差が大きく、持たぬ者は移動も大変な国でできた文化なのかも。
おっちゃんの仕事場の近くで降ろしてもらう。いくらか包もうかと思って降りたら、結構な油汚れがあり、布を貸してくれたがそれでは落ちない!とまごまごしている間におっちゃんは中へ。
ありがとうおっちゃん!まぁこれ撮ってる間に持ってくこともできたけど!どうなんだろうね、それが失礼に当たったらアレだし、日本で困ってる外国人助けるわ!
こうして辿り着いた海。地元民用の海。何か有名なビーチがあるとか聞いたが、別に変わらんだろうな、ヒロン程キレイじゃないだろうし、構わんよ。
ここでプカプカ浮いていたら、海にパラソルを持ち込む若者4人組が声を掛けてきた。
ハバナクラブを飲ませてくれ、片言の英語とスペイン語でやり取り。NARUTOとone-pieceとBLEACHとドラゴンボールと……集英社すげぇ!!
そして水着の姉ちゃんがいるので、当然のごとく、アレがいいとかお前声かけろとか、そんな話に。うーむ、どこの国も男は同じ様な話してるな!
果敢に挑んですげなく断られたチョイ悪オヤジとも仲良く話し出す。この辺はスゴイね。
最後に写真撮って―と彼ら。ああ!かぶってる!まぁいいか!
帰りはおっちゃんに義理立てて、「1CUCで乗せるよ」とかを断って歩く。恵みの雨もあり、当然歩いている人影もないので、大声で熱唱して帰る。酒のせいだね。
宿で一休みし、広場のちょっと外れででダイキリを。1.5CUC。
オヤジさん、ちょっと作りすぎちゃって、「ちょっと飲め!」と減らしたところに注いでくれる。うまい。
そして広場で音楽を聞きながら飲む。うーん、この涼しい時間にこういう楽しみがあるのは最高だなー。
宿に戻ると、何と宿にWi-Fiがあることが判明。19~21時は解放してくれるとか。ギャーLINEがー!!!
夕飯は焼き魚。ってデカい!日本人T君も魚を頼んでいたが、ヤミさんが失念。いやいいよ!二人で食べてもデカいよ!しかもわさびが置いてあったので使わせてもらう。
ああ、いい……。やはり俺は、生粋の日本人なんだなぁ……
この席には新たなコリアンがいたが、一人日本語を話せる奴がいて、なんか毎回申し訳ないな。
翌朝、お散歩に出かける。先日見た鉄道駅の隣駅まで歩こう、という企画だ。
どうも山をぐるりと回り込む形ですね。街を出る辺りでものすごい下り坂。そういえば、海賊対策で山に移したとかいってたな。こんな形で実感するとは。
馬を連れた人々とすれ違いまくる。何か仕事があるんかね。
しかし、手綱無しの群れが来たときはビビったぞ。
本当に何もない道。まぁ、木々などの自然はあるので、ヒロンとは状況が違うけど。
すれ違う人との挨拶。どんどん田舎に向かっている。駅に着。4kmくらいだろうか。
レストランが1軒あったがカサはなく、本当に田舎。なんか豚焼いてますよね、これ。
帰りの坂道付近で馬を連れた欧米人たちに遭遇。ああ、乗馬体験か。10~15CUCでできるらしいが、馬に乗りたがる理由が全く分からない。
軽食して街歩き。
月曜日になり、お土産屋台が出るようになった。まぁ、取り立ててどうというものはない。一番歩きやすい18時にはほとんどが店仕舞いしてしまうので、それはどうなんだろうという気分になる。
夕方のお楽しみ、「Casa de la Musica」での演奏タイム。今日は「トリニダー・スペシャル」というオリジナルカクテルで。派手!そして手間!味はまぁ、こういうものの常だね。
宿に戻ってT君と話していると、夕食の時間。
今日はエビ。ニンニクの効いたキューバ味。いつも出るアボカドや昨日のわさびがあれば、楽しさ無限大と踏んだわけだ。
「すいません、つい魚頼んじゃいました」
今日もデカいのキター!!ちなみに、2人で頼むとさらにデカいのが来るらしい。いや、これ一匹で二人で十分だけどね!
今日はコリアンたちはいない。なんでも、最近彼らの中ではやっている宿「キャメル」とかいうのがあり、そこは韓国人でいつもフル。飯だけ行くやつもいるらしい。飯はランゴスタ付き、食べ放題で10CUCとか。
でもなぁ……「レオとヤミの家」は閑散期だから、と10CUC朝食付き→5CUC朝食別途3CUCにしている。「それってつまり、ご飯はここで食べてね、ってことだよね」とT君。
それが人情だよね。っていうか、毎日食いきれないほど出て来るけど、それでも食べ放題がいいのか。お前らいつも残してるだろうがっ!
T君によると、どうもコリアンたちの軍資金は我々の2倍近くあるらしい。
というのも、南米をざっと1ヵ月で回ったらいくらかかるか、同室のコリアンガールに聞かれ「10万円くらいじゃね?」と答えたら、「韓国では20万だと言われている!」と驚いていたという。
言われてみれば、アイツら経済観念と言うか、豪華な旅だなーとか、化粧してんなーとか思っていたんだが、そういうことだったのか!っていうか大卒初任給みたいな金はどこから来るんだ!?
そう考えると、金遣い的に日本人のウェイトが海外で下がっているのは納得だな。日本人でバックパッカーやろうなんて頭おかしい奴に高額な軍資金なんてあるはずないからな。
しかし毎日カサで食べる義理堅い私たちには今日、アイスまでついた。すぐ溶けるキューバ式だが、めっちゃうまい。チョコ味だからバナナ揚げたヤツとも合う。最高。
「そういえばビートルズバーみたいのがあるらしい」ということになり、この旅一番の腹の膨れ方から小一時間待って出かけた。
「Yesterday」(立木ボイス)というバーだ。
入口からしてビートルズ。
中にはステージがあり、生バンドが演奏中。ダイキリ3CUCを頼んで席で楽しむ。
あー聞いたことある曲だけど、これビートルズだっけ?と思っていたら、T君もあまり明るくなかったらしく、いやこれ知識足りないだけかもしれないな、と聞いていたが、どうも交互かちょっと少ないくらいでビートルズだ。
いいのか、それで。まぁ、いいんだろうな……。
でもオープンテラスで風が気持ちいいし、洞窟ディスコよりいいかな!キューバっぽさないけど!
そういえば、ひよっこどうなったかな……。
翌朝、早くに宿を出る。
ガッツリ送り出してくれたレオ。部屋の場所的に会いに行かないと会わないから、何か微妙に距離があったけど、まぁトリニダーに来たらここだね!
っていうかハバナにあんなにいた日本人はどこ行ったんだろう。トリニダーにすら来ずに帰っているのだろうか。
キューバはネットもないので、宿の紹介をば。
「レオとヤミの家」
Simon Bolivar No.56
(街の真ん中を突っ切るこの通りを、南西方向にずっと行くと番号が若くなっていくよ)
通常時:朝食付きドミトリー10CUC(閑散期は部屋5CUC、朝食3CUC)
別途夕食5CUC(エビが7CUC、ランゴスタは10CUC)
戦士の魂が、我を呼ぶ!