第二百十話 サウンド・オブ・A / 栄・湖・清・水
出立70日目(通算233日目) オーストリア6日目 ザルツブルグ2日目
朝食付とは思いもよらず、しかもそれなりに充実したものであった。
朝早い出のため、いの一番に行ったが、それでも多くの宿泊客が集っている。皆時間が惜しいのだろう。
それでも8時過ぎのバスともなれば、7時からの朝食は駆け足になる。
ここで一計を案じ、サンドイッチを作って鞄に忍ばせ、残りをかき込んで宿を出た。
バスを乗り継いで、駅前のバスターミナルへ。
目指す街はハルシュタット。まずはバスの旅だ。
さて、ハルシュタットは風光明媚な土地として有名だが、そのアクセスには複数の選択肢がある。
1 電車
2 バス
3 バスと電車
電車は片道で28€近く掛かる、貧乏人にはデンジャーな選択だ。
その上、バスからの眺めが至高というレビューもあり、朝一番の身として、3を選択した。
国内の交通網を網羅した、QBBのホームページで、全行程は検索可能。すべて閲覧済みさ、翔太郎。
8:15のバスで、まずはBad ishiを目指す。
駅前のバス乗り場から出るが、これだけは自販機ではなく、運転手から直接買う。10.5€。まぁ、高いけど、電車に比べれば……ね。
バス停にはアジア人、というか日本人が多い。
さすがはオーストリアともなるとメジャーな国。ツアーを組まないまでも、バイタリティがあれば、個人で移動にかかる中高年の数も増える。
長期旅行ともなると日本人が恋しくなるが、こうも多いと、楽しいものではない。現地人の中に埋没したくなる。
オーストリア人にはサムライに見えても、日本人からは判断に困るらしく、日本語に反応しない方向で忍ぶ。それ忍者じゃん。
約90分のバス旅だが、出発そうそう問題発生。
腹の調子が悪い。
いや、我慢できるレベルだから。乗り継ぎまで余裕だから!
目的地までの道のりで、明日は湖の間を抜けていく。
時折に見える湖と山、緑の織りなす景色は、日本のそれとも異なる、エメラルドの水、急な傾斜、林ではない開けた土地という組み合わせが、嫌が応にも気分を上げていく。乗車中の日本人や韓国人もアッパーなテンションでシャッターを切る。
この辺は案外と見どころが多く、所々でアジア人が下りていく。よし、いい感じだぞ!
無事にBad ishiに到着。電車の切符を買って、トイレへ。
しかし男子トイレはいっぱい。オッちゃんが「隣使えよ」と言ってくる。
えっと、女子トイレと……優先トイレか。ま、優先だわな!
人もいないので入ったが、正直危なかった。
しかし、本当の悲劇はここからだ。当たり前だが、女子が並ぶ。
そうだ。全てにおいて、彼女たちは同じ仕組みのトイレを使わざるを得ない。当然の帰結だ。
し、しかし、今はいいが、これ、出るときどうすんだ?しかも結構な数のアジア人……つーか日本人いたよね!女子トイレから出る感じだよね、おっさんが!!
ま、マズい……。日本の法律内なら、緊急避難の要件として、ギリ許容される事案だが、ここはヨーロッパだ。糾弾されればDeth or Dieだ!
いや!今の私は髷というより、もうなんならポニーテール!口元隠せば、瞬間的に誤魔化せる可能性が高い。彼女たちが順番が空くことに気を取られている間に脱出するんだ!
……コレ、書かない方が身のためだよね?
電車が来たので、乗り込む。4.1€。
湖に沿った形で、30分程度の旅だ。問題なく駅に着く。
さて、ハルシュタットの街は、駅で言うと湖を挟んで反対側だ。渡し船を待って乗り込む。2.5€。
多くのアジア人、特に中・韓国人が、写真を撮るために大暴れ。
ああ、国際舞台と同じか……。
対岸に着くと、結構な勢いで散会する。まぁ、好都合なわけだが……。
さて、ハルシュタットの街自体は小規模だ。
この地にある岩塩を求めたケルト民族によって、ハルシュタット文化なるものが、紀元前1,000~500年に築かれた文化がある。この街はその頃からの名残の上にあるのだ。
とはいっても、何より目を引くのはこの光景だろう。
うーん、美しい。
流石は世界で一番美しい湖畔の街と言われるだけのことはある。
誰も教えてくれないから、この有名な角度、探すの一苦労だ。ちなみに、港から右に登って、道の途中からである。いろんなパンフレットに使われる構図だが、ベストは早朝の様だ。
ホテル高いからやだけどな!
ただ、影の都合上、午前中の方が良さそうだ。
ここは先ほどの景色ばかりではない。
建物自体もかわいくまとまっているし、
雑貨屋もセンスがいい。
この貯金箱。買いたいものが本体に造形されているぶーちゃんだ。私なら割れないわ!
湖水浴に勤しむ現地人の姿がちらほら。
それ用と思われる遊具もある。水温は低いが、日差しは強いため、泳ぐには丁度良さそう。足だけ入れたが、泳ぎたい衝動に駆られる。
また白鳥。こうもたくさん見ると、有難味がない。
何気に白鳥の首が長い理由判明ww
ハルシュタットビールなるものがあり、買ってみる。1.9€。
苦みと酸味が強い、若さあふれるストロングさが、いかにも地ビールらしい。湖を見ながら飲む一杯は、清涼感も相まって、爽やかだ。
帰りはインフォメーションセンター近くのバス停から、Bad ishiへ。5€。
そこから150番のバスでザルツブルグの街へ。
途中で、行きにも会った方と一緒になり、その方の話を聞きながら。
距離感と引き時って、難しいよね……。
13時半にハルシュタットを出て、16時ごろには戻れたが、余裕があれば、1泊したかった。街自体は小さいが落ち着いており、食事処もそれなり。泳いだりのんびりビール飲んだり、アイス食べたり……レジャーにはもってこいだ。
なお、周辺の湖群もなかなかに味わいがある様なので、この辺を回るのも楽しそうだ。
明日は市内観光である。