第九十五話 Iが止まらない / ガンジスに紅い薔薇
出立105日目 インド20日目 ヴァラナシ8日目
かつて、表題の曲を教えてくれた友がいた。
学生の頃、毎日といっていい程、つるんでいた男。
彼は5年前、突然に姿を消し、今も消息不明だ。
ニューヨークの高層ビルで働いていても、インドのスラム……それこそ、ここヴァラナシでアウトカーストに混ざっていたり、死体を運んでいたりしていても、不思議ではない男。
彼の誕生日を迎えるたびに、いつもそんなことを思い出す。
……もしかしたら、この路地の先で再会するのではないか。
しかし、その思いはかなわず、この街を去る日が来た。
ガンガーは、訪れる者の死を、生を見つめ、押し流す。
その流れを見つめることは、自己を見つめることに等しい。その感傷の中で、明滅する過去が希望をくれた時、人は次の街へ向かうのだ。
……友よ。
川の流れが別れても、いつの日にかその流れが再び交わる日が来ることを、私は願っている。
<リアルな動き>
下痢→マンゴージュース→寝台列車で移動
この旅始まって以来のダウンである。
まぁ、「ガンガーはいるために慣らそう!」っていうのと、前夜のバングラッシーにおそらく使われていた生水が原因。
みんなは絶対に生水飲んじゃだめだぞ!
朝には次の街である。
ヴァラナシは路地に牛のうんこが常に散乱していたり、幅1mしかないのにバイクがクラクション鳴らして突っ込んできたり、観光客から金を巻き上げようとする輩がいたりと、ダーティ爆裂な町だったが、それ以上に魅力的な町であった。
特にガンガー。つーか、ガンガーの一人勝ち。
沈没者が多く出る街で、もう少し滞在してもよかったのだが、都会は、やっぱり疲れるね。
もしインドにまた来ることがあったら、多分立ち寄るんではないだろうか!
さぁて、次の街さね!