第八十九話 Iが止まらない / インド人との距離感
出立99日目 インド14日目 ヴァラナシ3日目
生憎の曇りで、サンライズは拝めなかった。
昨日のゴタゴタでインド人とあまり絡みたくなかったので(笑)、ダラダラと過ごす。
朝食は近場で。
ポテトボールのマサラ掛け、みたいなものを食べる。
トンブリ的なものが入ったクリーミーなソースがうまい。店は一畳ほどで、地元民であふれる狭さだった。
その後にサモサを買ってガンガーへ。
ぼんやり川面を見ながら食べて、ガンガーを南に下る。
適度なところで通りに出ようとガートを上り、インド人に誘われてレストランを見てみる。
腹いっぱいだから食わないよ、と言って入ったが、何も食べないで出ると、悲しそうな顔をする。
素直な人たちだな。
カレーの仲はともかく、野菜を取っていない気がしたので、手ごろにビタミンを取ろうと、路上でみかんを購入。3つで20R。適正なのかは不明だが、店のオヤジはものすごくうれしそうだった。
ホテルの屋上でガンガーを見ながらみかんを食べる。
同じホテルの欧米人が現われ、半裸で何か始めた。暑いので先に降りたが、瞑想でもするのだろうか。
そういえば、ガンガー沿いにも瞑想中の欧米人がいた。
日が傾いたところで、路地を散策。楽器屋や服屋を覗く。
熱心な服屋のオヤジがおり、店の中でいろいろ見た。東南アジアとはテイストが違うが、いかにもお土産、という感じでもないので、割といいかもしれない。
ただ、荷物を無駄に増やすわけにもいかないので、一度考えるから、と店を出た。
オヤジ、こちらが去った後で服を乱暴にたたきつけたような音が聞こえた。
そんなに売れなかったのが嫌か。嫌だろうけどさ。
少なくともお前さんのとこで買いたくなくなったよ……。
多くのインド人はかなり目先の欲にこだわる。
昨日の外道共も同じかもしれんが、どうも諸々短絡的だ。
素直でいいところでもあるのだが、慎み深さや「付き合い」という概念を重んじる日本人とは、相容れない国民性なのかもしれない。
例えば楽器教室もやっている様な、日本人との付き合いがあるインド人はその限りではなく、間合いも日本人の呼吸に合っている。
観光客慣れして身に着いたものなのか、それとも金銭的に余裕があるからなのかはわからないが。後者が大きいか。
そんなことをガンガーを見ながら考える。
地球の歩き方にも多少の観光地は載っているが、ここはやはりガンガーを見つめているに限る。街の、そしてインド人の喧騒から逃れられる点もありがたい(それでもウザい奴は現れるが)。
時間が来たので夕食に。Jさんと待ち合わせである。
昨日とは違う安食堂でタリー。40R。
冷めたライスとプリー(揚げたロティ)はいただけないが、豆カレーと野菜カレーは温かくてうまかった。
カフェ的な場所を路地で見つけた。一応コーヒーなどもあり。
ここでマサラティーをいただきつつ、明日の午後出掛ける算段を付けた。
ようやく街に慣れ始めたが、まだ腰が引けているのが事実である。
果たして、この先沈没するように浸かれるのだろうか……。