新劇場版 世界の果てまで行って:破

新劇場版 世界の果てまで行って:破(仮)

このブログは、特撮オタクの私が、5年半努めて勤めた会社をやめて、ユーラシア大陸をめぐる物語である。〈背景のモデルはフルスクラッチです:自慢〉

第三百三十五話 モーター・A・ダイアリー / 悲喜を越えて行け

出立172~3日目(通算422~3日目) アルゼンチン19~20日目 メンドーサ3~4日目 ~ チリ3日目 サンティアゴ1日目

 

 酒が残る事もなく起きられた。やはりいい酒だったのだろう。

朝食後にSちゃんとAちゃんを見送り、切符を買うJ君もそれについて行った。

「いやー切符の関係で今日の夜出るわー」という彼としばらく談笑し、こちらも情報集めを……ネット遅いな。つか動かねぇ。

 

昼過ぎに諦めて外出。ボデガを思ったより巡らなかったのはイイとして、よく見たら予備の財布から600ペソも発掘してしまったのだ。

これをチリペソに替える。うーむ、メンドーサはこれまでで一番、ドル→アルゼンチンペソがいいレートで交換できた。が、これはどこでもだがアルゼンチンペソからの交換は軒並み微妙。さすがは国際的信用度の低い通貨である。

 

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中央にある公園にあった狐。なんか、どっかで見られるって聞いたな、そういえば。

 

その後、同じ部屋のフランス人(J君とは別)に勧められた、メンドーサを見渡せる丘に向かって歩き出したのだが……思ったより遠い!17時回ったのにまだ着かないぞ?!

治安のいい街とはいえ、暗くなったら嫌だし、ていうか疲れたし寝るし!

 

ということでスーパーに行ってホテルへ。丁度旅立つJ君を見送り、お料理。

 

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初日の肉と残った野菜たち。ついでにチーズも含めて。

ワインは結局行けなかった有名なボデガのもの。当然マルベック種で、あとは柄で選びましたww

これも結構おいしかったなぁ。

 

翌日、1人寂しく朝食をして、宿を出る。バスターミナルまで2.5kmくらいだ。

 

さて、これからチリのサンティアゴまで抜けるわけだが、このルートはアンデス山脈の中を通る、非常に景観のいいルートとして有名だ。道のり的に7~8時間かかるので夜行もあるのだが、こういった理由で9時発のものにした。カードが使えるところで850ペソ。あ、左側がおすすめです。

 

これが確かに面白い。

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地形にかなり違いがあって、こんな縞々模様の感じの他にもレインボーマウンテン的なものも。

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その後方に見えるのが、おそらく、南米最高峰のアコンカグアと思われる。マジでデカい。デカいのが二つ並んでいるので、もう大興奮である。

 

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壁みたいに見えますが、人工物ではなく岩盤。テーブル状になっている。

うむ、マジで面白いな、この景観。

バスの車内ではシビルウォーが流れていて、そっちも気になったが、音小さいスペイン語字幕だから、これはまたちゃんと見ればいい……いやでも気になる!

 

3時間ほどで国境に。相変わらず入国はスムーズだが、荷物の検査に時間が掛かる。お、ここの犬はちゃんと嗅ぎ回って優秀だな!

 

しかし一人ずつ荷物を開けられるといったことはなく終了。ま、マジか!

ボリビアとの国境ではあんなに手間かけたのに……。コカの扱いの違いが理由だとは思うが、妙にあっさりして拍子抜けだ。とはいってもX線検査とかはあるから生ものとかはやっぱり持ち込めないだろうけど。

 

しかしバスに乗ってからが妙に長い。これは誰かの手荷物が引っ掛かったんだろうか?だとしたらふざけた話だ。そういえば目の前に座っていた中年カップルが戻ってこない。コイツラずっと濃厚なキスシーン演じていたからイラついていたが、それで生もの持ち込んでたらカムチャッカファイヤーですな。

 

残った野菜とチーズで作ったサンドイッチは、この時までに食べきっていた。食べ物出ない、と聞いていたからだが、ちょっとしたお菓子とコーヒーは出た。アルゼンチンのバスは律儀だな。幸い、あのお菓子じゃなかったし。

 

結局2時間くらいで出発。おそらく1時間で通る想定だったのだろうから、到着は遅れるだろう。他の人のブログで「結局10時間かかった」というものもあったから、それを考えればまだマシだろう。

 

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景観は楽しいが、アルゼンチン側の方が豊富かもなー。グルグルと狭い山道を下っていく。

 

何だかんだで1時間遅れの到着。サンティアゴのバスターミナルはすぐ目の前にメトロがあるのでこれを利用。まぁ、路地で降ろされたけどね。

 

チリのメトロは混雑時と平常時、早朝・深夜時で料金が違う。17時ごろは平常時で、660ペソ(チリペソは6で割ると大体日本円)、緑の切符だ。

そう切符!アルゼンチンは頑なにカード買わそうとして来るので、そのために使わなかったが、ここは切符なのでお手頃に行ける。もちろん、チャージ式のカードもある。

 

こうして宿の前まで辿り着いた私。三段ベッドという、一番上怖そうなところの2段目に。

その下に日本人のF君がいた。日本に帰ったりしているが、合計4年もやっているという猛者で、3年くらいは自転車旅だったという。

旅先で合った日本人で「自分探し」をしている人に出会ったことはないが(多分そういう人は長旅でも日本とか、身を守れるところに行くんじゃないかな、ファッション感覚だしとか思っていたわけだが)、彼は「いやー4年も探してるのにまだ見つからないんですよねー。これもう見つからないんじゃないかなー」と言っていた。そうか、見つからんかww

言いきられると、それはそれで清々しいものである。

 

スーパーに買い出しへ。と言っても1泊なので、野菜使い切るのもきついだろう。ここ暑いから持ち歩きたくないし。

 

というわけで、肉だけ買って焼く。

っていうかですね、チリは海鮮の国だって聞いてたんです、私。ほら、海岸沿いに細長い国じゃないですか。でもね、大きいスーパーなのに魚売ってない。いや、市場があるのは知っているけど、時間的にもう閉まってるでしょう、遠いし。だから日本の感じで、生では行けなくても焼く魚くらい肉と同じように並んでるだろうと思ったら、まぁない!ブラジルの牛肉とかしかない。普段何食ってるんだ、こいつらは。

 

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そんな怒りを込めた、肉だけステーキ。

 

ま、味は落ちるね。

 

しかし、悲劇はここからだった。再びダニメニーバイト事件が発生してしまったのである!最っ悪だ……これから飛行機で長距離移動があるのに!

 

仕方なく明け方にソファーに移動した。キレイでキッチンも二つあっていい感じの所だったのだが、全て台無し。最後の最後でテンション落ちるなー。

 

もうさっさと移動しますよ!

 

海の幸が、我を呼ぶ!

第三百三十四話 モーター・A・ダイアリー / ワイなりのワイナリー

出立170~1日目(通算420~1日目) アルゼンチン17~8日目 メンドーサ1~2日目

 

 

 

朝はお菓子とコーヒーまたは紅茶。両方付いてくるけど。

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お菓子はこれまでと違うかと思ったら、外側が白い砂糖系のコーティングに変わっただけであとは一緒だった。何だろう、買収でもされているんだろうか。

 

流石にパタゴニア地方から抜けてから、街中を走ることも増えてきた。

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そして(多分)ぶどう畑が多く広がる。さすがはワイン大国。期待が高まる。

 

バスは13時過ぎにターミナルへ。

取りあえず次の街へのチケットを買う。ほとんどが現金払いのため、カード使えるところで購入。現金の所は大型バスで760とかだが、カードなら850の所だ。差額考えても、ATM使うほどじゃないね。

ターミナルは比較的セントロに近い良心的な場所にあるため、歩いて向かえる。特に治安も悪そうではない。しかし大きな問題が。暑い!暑いでわす!そう、南米はこの時期、北に行くほど暑くなる。だって夏だから!

2.5kmくらい歩いて宿へ。僕を助けてきたズボン下が、首を絞めてきますな。

 

部屋が南米諸国の名前になっているエリアで、つい最近話題にした「キューバ」が私の部屋。Wifiが届かない辺りまで寄せて来る徹底ぶりだ。

 

移動疲れであまり動きたくないのだが、取りあえず街に出てみる。

 

メンドーサは1561年、植民地時代に街の歴史が始まるが、1861年の大地震で甚大な被害があったため、当時のコロニアルな建築がほとんどない。写真撮ろうと思うところ、一つもなかったからね。

南米独立戦争の折、英雄サン・マルティンがチリ独立支援のため5000人の「アンデス軍」を率いてこの街から国境へ向かったのが有名だ。また、南米最高峰・アコンカグアへの拠点としても利用されている。

 

碌なもの食べていなかったので、公園横のコンビニ的なところで、スーパーパンチを購入。

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20ペソ。結構ボリュームがあり、アルゼンチンであることを考えれば、驚異的な値段だ。まぁ、サルタの公園の奴のが安かったけどね。サイズが違うからね。これを公園でいただいた訳だが、食べ終わった後の厚紙放置はともかく、食べかけが放られているのを見ると悲しい気持ちになる。多分こういう奴はアイスのコーンも捨てる外道だな。

 

シエスタ時間とかぶっていたこともあり、ツアーデスクも開いていない。メインのサン・マルティン通りを歩いたら、あとはスーパーで買い出して終わり。もうね、とにかく眠くなっていた。

 

ということで宿でダラダラして、夕食の時間に。

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これ、いい肉でしょ。「チョリソ」ってのが部位的にはいい感じっぽいことを初めて知ったよ。だってチョリソってお前、ソーセージだって言ってたじゃん、今まで!という裏切られた気持ちでいっぱいだが、ともかくこの値段なら文句ない。テンション上がって写真撮っちゃったわけだが、ドイツレディスに見られていた。そういえばチャルテンでも「なんで毎回食べ物の写真撮ってるの?」って聞かれて困ったな。彼女もドイツ人だったか。

 

ともあれ、これがきっかけでレディスと話すことになった。SちゃんとAちゃんである。Sちゃんは日本に行ったことがあるらしく、その時のことを楽しそうに話す。スゲー快活で物おじせず、これは男女ともに好かれそうだなーって感じ。痩せれば確実に美人だし。

そしてAちゃんはなんかモデルかって感じにキレイな姉ちゃんだ。

 

そんな楽しいクッキングタイムを経てどん!

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もうね、食った瞬間ガッツポーズしましたよ。うますぎぃ!100ペソですからね。650円いかないんですよ、4枚で。つまりこの日のだけなら300円台。ワインのマグナムボトルも72ペソ。アルゼンチンさんはレストランは攻撃的なのに自炊の家計には優しい。

 

途中で調理終えた彼女らと別のドイツ人ボーイとも話していたら酒が進み過ぎて、ベンチで寝るという、海外で初の自滅をしてしまった。

「そのワイン一人で飲むの?」「そうだよー」「私あなたのこと好きだわ~」という流れも、今から考えると恥ずかしくて死にそう。そして起こしてくれたスタッフ、ありがとう。充電してたノーパソも無事だし、いいホステルだね!

 

f:id:haruki0091:20171223194937j:plain朝食も劇的にいい感じ。このカラフルなシリアル、ミルクと合わないふにゃふにゃさ。 

 

アルゼンチンペソ確保のため、街へ出る。

実際ここで最後だし、レート悪いので残したくないのだが、どうしても必要な理由がある。

ここメンドーサはアルゼンチン随一のワインの産地。アルゼンチン自体、世界第5位くらいの生産地なのだが、メンドーサは国内生産量の70%を占めている。

3000ものワイナリーがあるといい、中には見学や試飲ができるところもあるという。ここを訪れる人の大半の目的はこれ。

 

ツアー会社で行く方法もあれば、自転車を借りて巡るなんてのもあるが、いずれにせよ実弾(現金)が必要というわけだ。

ということでインフォメーションセンターに行って、後に換金しようと赴いたわけだが、銀行が滅茶苦茶混んでいる。そして両替場も混んでいる。な、何故だ?給料日か何かか?

昨日までとは明らかに客の量が違い、外に行列が出来ている。なんてこった!

 

結局両替したら12時近くになり、これもう今日は諦めて明日にしようと、スーパーに寄って帰ると、Aちゃんが。

「あと15分で行くよ」

そう、昨日ワイナリー巡り行くよねー的な話の流れで「一緒に行っていい?」「もちろん」みたいになっていたのだ。Sちゃんの人柄もあるだろうが、面倒で絶対一人で行くマンだった私が、旅の最後っ屁的な感じで惜しくなってそういうことを言ったのかもしれない。

 

ともかく、10時過ぎても起きてこないから今日は行かないもんだと思っていた私だったが、大慌てて準備した。ヨーロピアン時間だな。

 

メンバーはドイツ組3人とフランス人の男性Jくん?さん?(年齢を最後まではぐらかす乙女みたいな展開になったからね)を加えた5人編成だ。

当初はバスで向かうつもりだったが、インフォセンターで聞いたら、ホテルの位置的に「トラムで行って、近くで自転車借りれば一番早い」ということになったのだが、かじ取り役のJ君もトラムのつもりだったらしく、従う。会話の端々からもわかるが、彼はワインに相当思い入れがあるらしく、本場出身ということも相まって、もうコイツに全部任せとこう、という気持ちになる。

 

しかしここで突如ドイツボーイは離脱。Sちゃん曰く、どうもバスで行くつもりだったらしく、「トラムよりバスの方が絶対安い」と譲らなかったようだ。

「見たか、これがドイツ人だ。アイツらケチだからな」とJ君。ほう、そういう解釈なのか、欧米では。このJ君、今まで見たことないタイプのフランス人で、冗談大好き、ふざけるの大好きな、超フランク野郎だ。

彼はしきりに彼女たちを「バリローチェでクリスマス過ごそうぜ!」と諦めずに誘い続けており、事あるごとに持ち出すので、新喜劇における定番ギャグみたいになっていて笑ってしまう。

そんなバルタン星人の限りなき挑戦魂的な話を聞きながら、4人になった我々はトラム駅へ。

しかし私は知っていた。トラム乗るには「Red Buss」なる電子カードが必要なことを。

インフォセンターで聞いたところでは売ってなかったので、それも探しながらホテルに戻ったのだが、マジで見かけない。さすがにトラム駅周辺ならどこか売ってるだろ、と辺りを見ていたのだが、キオスコの一つもない。マジかよ、メンドーサ!

いや、っていうかそもそもSUBEがあるだろうがっ!バリローチェでも使えて素敵って、この前褒めたばっかりでしょうが!なに変なとこで独自色出そうとしてんねん!メンドーサマジ面倒さ!

 

 

とか言ってもカードは見つからない。SちゃんもAちゃんもスペイン語ペラペラなので、同じく待ている女性に尋ねるものの、この辺りにはないだろう、とのこと。

ちなみにカードは20ペソで、トラム片道8.5ペソ。大した金額じゃないのに変えないと歯痒い(単純な価格だけならバスより安いぜ、ドイツボーイ!)

そんな中、何とこの女性が「4人分くらい私が出すわよ」という。さすがに悪いので払うといっても「大丈夫だから」と譲らない。うーむ、アルゼンチン人、優しいな!

トラムの中でも注目を集める我々。

今までアジア人だから悪目立ちしてるもんだと思っていたが、外国人ってことが一番の理由だった様だ。わからん、ドイツガールズの目立つビジュアルもあるか。ともあれ、かなりたくさんの人が話しかけてきて、彼女らがスペイン語で話すものだからあっという間に車内の中心になってしまった。

 

こうして終点で降りた我々。だがこの女性の親切はまだ終わっていなかった!

帰りも必要だからとカードの売っている店まで案内してくれたのだ。何ていい人!

病院勤めていうから、もしかしたら懐に余裕があるのかもしれない。貧すれば鈍するの逆ですな。

ということで、日本に帰ったら困っている外国人めっちゃ助けたろ、と思うのであったww

 

さて、既に昼過ぎだが、さっそくワイナリー(ボデガ)を巡ろう。っていうか暑いな!昨日に輪をかけて暑い!

先程の女性も「ここ最近でちょっとないくらい暑い」と言ってた。ということで、炎天下に自転車はやめよう!と判断し、バスと徒歩を併用する作戦に切り替えていた。

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まずは最寄り&無料で見学できるこちらのボデガ。

 

スペイン語と英語のコースがあるが、ガールズが訳してくれるというので、すぐ始まるスペイン語ツアーに参加。待っている間にサロン見学。

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「最高のクリスマスツリーだ!」と興奮するJ君。うん、中身入ってたら間違いなく私もそう思うww

 

ツアー開始。

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こちらのワイナリーは1898年創業。熟成用の樽もサイズが結構あるようで、小型からデカいものまで。あ、これ今はもう使ってない小さいやつね。また聞き解説のため、かなりふわっとした情報になるけどねww

 

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ここでぶどうを絞って

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タンクにため、

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糖分をアルコールに変化させ、

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樽で寝かせる。

6カ月~17年とか言ってたかな。このデカいのは洗うのに2日かかるらしい。

どうでもいいけど背中からでも美人だな、Aちゃん。

 

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箱詰め。マシーン感は見ていて楽しい。この機械特にいい。瓶壊れないように入れる仕組みがもうね、頭の中に「レッツマイトガイン!」が流れ出す感じ。

 

こうして見学を終えると、お待ちかねの試飲タイム。

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雰囲気のある地下でお試し。赤と白それぞれを、楽しみ方含めてレクチャーしてくれる。赤はアルゼンチンワインの基本種、マルベックを使った若いものだ。かなりスパイシーな印象だが、さすがにスーパーで安く買ったものとは違う。渋味がきつめだが、肉と超合いそう。

白は甘めで飲みやすい。

あ、先に言っておきますが、種類かなり飲んだので、記憶が混濁してるんですよね。1つずつメモでもつけておけばよかったが、表現曖昧だったらすんません。

こうして無料なのに試飲までできたツアーは終了。ただ、J君が飲みたいのがあるということで、最初のサロンに戻る。

1杯ずつ、良心的な値段で飲めるのも特徴。ということで、2杯分を4人で分けるという形で試飲。1杯74ペソだったかな。かな、というのは「俺が飲みたいから」とJ君が支払ってくれたからなんだよね。さすがに私は二人だけの時にちょっと出したけど、スマートだよね。

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こちらはシラーという品種のもので、彼はこの種が好きらしい。口当たりは先ほどのよりもよかった記憶がある。どうだったかな。こっちの方がおいしかったのは間違いないんだけどな。

 

このサロンが冷房効いてて(ワイン用の適温レベルだけど)、Wifiもあったので「1日いられるな」とかなりダラダラと過ごしていたが、流石に腹も減ったし行くか、と外へ。

バスで公園辺りまで下って、ちかくのパンチ屋さんへ。

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ドリンク付きで50ペソ。具が選べるタイプで、野菜とコーンの野菜不足を少しでも解消しよう作戦。味は語るほどでもないが、こういうジャンクなもの、好き。何でも日本よりボリュームあるのがいいよね。

 

さて、この時点で16時半を回っていたのだが、インフォメーションセンターに行くと「ワイナリーは17時半に閉まる」というので、J君と私が行きたがっていたところは諦め、近場の所に。

 

と、途中でJ君が「ケーブル買わなきゃ!」と目の前の店に入る。自由過ぎぃ!

 

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ボデガはこちら。そういや、メンドーサのインフォセンターで勧められたのもここだったな。

ここでは見学+試飲なら120ペソ、試飲だけなら80ペソだという。もう酒だけ飲もうということに。

 

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この4種類をテイスティング。係の姉ちゃんにとっての初めての客だというので盛り上がる(前は別のボデガに勤務していたとか)。英語が話せるためJ君も私もわかりやすくなったのだが、これまでの習慣で、彼女の説明後にSちゃんが同じ内容を話し出した。

「いや、でも、彼女英語話してるけど……」と今日初めてJ君の困惑した表情を見られたのはよかった。笑いに包まれたが、彼女の優しさがわかる一幕で和む。もう一度同じ過ちを繰り返してたけど。

 

さて、肝心の味だが、左から順に飲んでいく。1杯目は記憶に残っていないが、2杯目はかなり癖の強い香りで、一瞬ウイスキーを思い起こさせたが、オークの樽で寝かせたかららしい。納得。

次の1杯も同じくオークの樽も使っている様だが、こちらの方がすっきりと飲みやすく仕上げている。

最後の白はお姉さんが好きだという一品。かなり甘めで、微発泡している感じ。

しかしさすがは欧米人、「私的にはイマイチ」とはっきり言う。

悲しそうなお姉さんに「僕は好きだよ」とJ君。お前、甘いの嫌いって言ってたじゃねぇか。

しばらくしたらこっそり「うわ、甘っ!」みたいなリアクションしていた。私が言うのもなんですが、お調子者だ。

まぁ、「日本の女の子は好きだと思うよ」という我が言葉には偽りがない。というか私お酒なら大体いいです。あの、アイスランドで飲んだアイツ、アイツだけは許せねぇ。

しかしすべてマルベック種だったが、ここまで違うとは。やはりワインは奥が深いですなぁ。

 

1杯の量が結構あるので、かなり満足できる。というか、つまみほしい。誰かが「3つも周ればベロベロになる」と言っていたが、それも理解できるサービスっぷりだ。だって80ペソって500円くらいですからね。ボトルだってそんな安い奴じゃないから、確実にお得。これはイイ!でも酔っぱらって自転車乗っても大丈夫なのか、アルゼンチンは。

 

こうして楽しい時間はあっという間に過ぎ、メンドーサに戻る。宿でワインパーティをやろう、という流れになり、スーパーと、ワイナリーに行く。事前にJ君が押さえておきたいボトルを調べ、それが売っているであろう場所を特定していたのだ。さすがはワインの国の男。頼りになる。

 

バスチケット買うために、ワイナリー行く前にガールズが離脱。ターミナル閉まる時間が迫ってそうだったので、ホテルに戻るだけの私が「(買い出しした)荷物持つよ」といったが、頑として譲らなかった。これは自分たちの水だし、分担だから、という。

 

うむ、とかく欧米人男性のレディファーストは取りざたされることが多いが、女性たちのこういうところも日本とは違うのかもしれない。ま、どっちも個人差あるだろうけど。

そういえば必ず「あなたはどうしたい?」と聞かれまくったな。流れに任せればOKだったのだが(だってワイン大国マンいるし)、日本人は自己主張しないと思われ過ぎるのもいかんよね。

 

さて、宿で諸々準備整えた結果がこちら。f:id:haruki0091:20171223202058j:plain

すっごーいでしょ!クレバーでしょ!天っ才でしょ!

絶対一人じゃできねぇ!良かったー!

サラミと生ハム、チーズ3種にパン。最高ですね。特に自分で切るタイプのサラミとブルーチーズのベストマッチ!がヤバい。本当にうまい。

 

そしてワイン。さすがはフランス人。どれもハズレがない。個人的には一番右が好きかな。

 

こうして我々のユニット名が「マルベック・テイスターズ」と定まったところで、お開き!

 

個人的に行こうと思っていたボデガは行けなかったが、やはりサンバルカンのED通り、1人よりも2人、2人よりも3人がいいという奴で、楽しい時間になった。行く先々で人数が増やせるのが、1人旅の魅力だと思い知れた。よかったよかった。

 

さて、明日は……ボデガはもういいけど、することないなww

 

残り日数もあとわずか!悔いを残さず突っ走るぜ!

 

 

魅惑の浪漫が、我を呼ぶ!

第三百三十三話 モーター・A・ダイアリー / リアルと理想と言ったもん勝ち

出立168~9日目(通算418~9日目) アルゼンチン15~6日目 サンカルロス・デ・バリローチェ1~2日目

 

2階の最前列ということで、眺めもいい中での目覚めだ。

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朝食代わりに甘いお菓子とコーヒー。コーヒーはティーパック式。初めて見たわ。

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さてこの道、ルート40と言ってアメリカのルート66と並ぶ、超有名な道路だそうな。

パタゴニアにはこの標識を模したお土産がたくさんあったが、見ている限り取り立てて面白い景色があるわけでもなく、開けた土地を延々と走っている感じで飽きて来る。

あと、窓ガラスヒビ入ってるんだよね。

ついでに言うと最前列では画面が見られないため、流れている映画もよくわからない。まぁいいんだけど。

 

何度か休憩があり、そのたびに外へ。Wifiの使えるところがあった。Tさんからは「送ってもらうとお手数なので、そのバッテリーは差し上げます」と来ていた。うむ、スゲー重いので、送るのならそれでもかまわなかったが、ともあれ、これでウルトラコンバーターを手に入れた様なものなので、長距離移動にはもってこいだ。相変わらず、充電できる設備はないし。そして早速この日使いましたとさ。

お昼には軽食が。

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似た様なラインナップだ。どうでもいいが、このお菓子、種類替えてくれないかな!?チョコパイの中のクリームがドルチェ(ドゥルセ?)・デ・レチェになった感じで、おいしいけどめっちゃ甘くて、日に何度も食べるもんじゃない気がする、デブ養成スーパーフードだ。

 

そしてバスはあれよあれよという間に遅れて行き、21時前着と言っていたのが、23時ごろ着。おいっ!

いや、おかしいと思ったんだよ。数年前には30時間近くかかってたのに、どこに省略できる要素あるんだと思ってたら案の定だよ。つーかもっと早く出んかい!

 

さて、翌日出発のバスを買おうと思っていたが、当然窓口は全て閉まっている。明日か。

セントロまで3km、予約したホテルまで2.3kmほど。

普段なら歩くが、この時間に未知の土地をというのはいくら何でもよくない。タクシーか……あ、バスがあった。SUBEカードを使う様で、他の人に倣ってタッチ、乗車。

……ん?確か中に1ペソも入ってないよな?

しかしその後の人の流れを見ても、手続きに瑕疵があったようには見えない。理由は翌日わかるのだが、ともあれこの時間にもバスがあったこと、SUBEが使えることが分かった。ヨーロッパでもこの手の電子カードはその都市しか使えない、みたいなことが多かったが、こいつはSuicaとかIcocaみたいに国内結構なところで使えるんじゃないかな。だとすれば、買って損はなさそうだ。

 

こうして23時過ぎに宿へ。無事チェックインし、シャワーを浴びて、キッチンがまだ使えたので、持ち越した食材で夕食を。

 

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日曜日だし、時間的にほとんどの店が閉まっているので、食材と缶詰を残しておいて正解だったぜ。

 

朝食付きの宿なのだが、えらい充実していた。パタゴニアに片足突っ込んでいるとはいえ、これまでのところより安いし、いい感じだ。ゆで卵にオレンジ、パウンドケーキ付き。パウンドケーキは前日に厳つい髭面の兄ちゃんがオーブンで焼いていたものだ。そう考えると可愛いな。

 

これを食して早速ターミナルにチケットを取りに行く。

次なる街はメンドーサ。しかし、流石に当日のチケットはない。ただ一人、「乗り換えありなら」と提案してくれた姉ちゃんがいて、ここで購入。1,880ペソくらい。直通で安い所は他にもあったが、残り日数と次の街でしたいことが多いことから、強行突撃案を採用。

ただ、通常13時発→翌朝8時着のところ、同じバスでNeuquenという街まで行き、そこで4時間待って翌日11:45着なので、無駄な時間がある方法なのだ。まぁ仕方ない。

 

そしてこの街の観光に要せる時間が1時間くらいしかない。慌てて宿に戻ってチェックアウトし、次の街の宿を取ったり情報を手早く集めたりで、街へ繰り出す。

 

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ナウエル・ウアピ湖に面していて、奥には山々が見える。いい景色だ。

サンカルロス・デ・バリローチェは前述の通りパタゴニア地方に属し、標高2000~3000m級の山々に囲まれた小さな町。19世紀の終わりにスイス人が多く移住したため、木造のシャーレ式の建物が多く並ぶ。景観と相まって「南米のスイス」と呼ばれるゆえんだ。

ブエノス・アイレスはパリだったし、何かと欧米感を出してくるな、アルゼンチン。

冬はスキー場、それ以外にもこの湖は国立公園になっていて、アウトドアスポーツが楽しめるようだ。

 

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カテドラル。久しぶりの名前だが、これも様式がどことなく向こうの感じを漂わせている。

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中も何というか、品がいい。南米の中でもアルゼンチンは比較的そんな感じだったが、それと比べても品がいい。

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なんかスイスっぽいな、これも。地味にキリストアイテム。

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広場の入り口。これまでとは確かに雰囲気が違う。

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中の建物や

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観光バスも。

 

季節柄、広場中心にはクリスマスツリーが。

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おっしゃれー。こう見ると確かにスイス感がある。行ったことないけど(伊達さん)。

 

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お土産市場。手作りの品もあるようで、ここが結構面白い。

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妖精?グッズの店。アルゼンチンの土産は垢抜けすぎていて癖がなく、どうも面白みに欠けたラインナップだったのだが、スイスの様式が入っているのだろうか、ここは見ていて結構面白い。

 

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メインの通り。確かにスキー場の街並みみたいな感じで統一感があり、ゴミゴミしてなくていい雰囲気だ。ブエノスアイレスより全然いいだろ。

 

そしてこの街の名物として忘れていけないのがチョコレート。

南米がカカオ豆作っているのはエクアドルから見てきていたが、ここでも例に漏れず、名物化。かなり種類があって、量り売りで好きなものを選べる。

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いくつも店があるのだが、ここのお姉さんが試食させてくれた。つってもここまでの旅で日本のチョコレートメーカーの優秀さを嫌というほど実感していたので、どうせ大したことないんだろうなーパクっ。うっまっ!!

 

思わず目を見開いて呟き、姉ちゃんの方見るレベル。な、なんやこれ!めっちゃうまいやんけ!

 

そうか!これまでの所と大きく違うのは、欧米の、スイス式のチョコレート加工技術がきちんと備わっているというところだ。イグアス居住区でラーメンがうまいのと同じ状況。素材と技術が揃えば、うまくならないわけがないのだ。

 

そういうわけで、仮面ライダーグミのCMのキッズみたいな流れを演じてしまったが、お買い上げ。1kg430ペソの所で、50ペソ分。満足顔で店を出る。

 

ちなみに、かなり価格の違いがあり、超デカい店を覗いたら1kg840ペソで、手の込んだチョコレートが並んでいた。味も違うかもしれないが、これで十分。

お土産にもいいだろうけど、まだちょっと暑いところ通るから、今回はやめておこう。ま、アジアや南米諸国では食えないレベルだが、ぶっちゃけデパート行けば近しいレベルのもの食えるしね。日本の製菓技術スゲーは、やっぱ。

 

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他にもこんな感じの飾りチョコレートが並んでいた。もう完全にクリスマスだよなー。

 

あとはチーズフォンデュとかアイスもおいしいというが、時間の制限と、店も見つからなかったので諦める。長時間移動でお腹壊してたら嫌だから、ってのもあるが、要はスイス名物探して食えばOKなんだろうな、この街は。

 

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帰りに軽食用にエンパナーダを購入し、大慌てで荷物を取ってターミナルへ。

充分だったかわからないが、満足するレベルで見ることができた。物価も高いというけれど、スーパー行けていないので不明。雰囲気が通常の南米とは違うので、喧騒に疲れたら来てみるのもいいのかもしれない。

 

さて、バスは30分遅れで出発。横のおっさんのがボロボロこぼしたパンくずで席が汚れているが、肝心のおっさんは私が座ったら移動しやがった。ふざけやがって。

6時間ほどの旅。画面では映画を流していて、英語の作品にスペイン語字幕なので、これまでより格段にいいのだが、なんか人間の嫌な部分や心理の動きを描いた作品が2本続き、ゲンナリ。長旅でダラダラ流すもんじゃないだろ、と思ったら、今度はジャッキー・チェンの映画。あーやっぱいいわ、ジャッキー。スゲー。こういう時はこういうのだよな。

 

丁度見終えたくらいでバスは到着。「Neuquen」のバスターミナルはバリローチェのそれよりも大きく、会社も多い。周りへのキーになっている街だった様だ。メンドーサ行のバスを扱っている会社も多いようだ。あの窓口の姉ちゃん以外は提案してこなかったが、ここまで来れば他の会社のも手配できたのかもしれない。知らなければできないが。

 

しかしWifiは有料だし、ここでも時間を潰さなければいけない。バス内よりもパソコン出したくない雰囲気あるので、やることがない。

ここにSUBEカードの状況調べられるマシンがあったので読み取ってみたら、「-16,78」と出た。なるほど、次使うまでにこの分含めてチャージすればいいよ、という救済措置だったのか。ともあれ、このおかげで助かったわけだ。窓口の閉まった前日では、チャージもできなかったし。

 

ターミナルを歩き回ったりで時間潰していたが、窓口で聞いたら「1時間遅れてる」とか言う始末。うーむ、歯痒い。バスの移動時間も「~に無事到着」と文字では少ないが、この時間潰すの本当にしんどい。アルゼンチン広いからしょうがないけどね。

 

近くのアルゼンチン人と話しながら待ち、1時間半遅れでバス着。0:45か。軽食買っておいてよかったよ、本当。

本来の席はカップルで座っていたので譲り、彼氏の座る方だった席へ。これが良かった。隣の人は途中で降りたので、2席丸々使えて、体勢を好きに変えられた。

とはいえ、流石に2日連続で25時間+19時間(予定、別途待ち時間5時間半)というのはよくなかったな。もう2度とやらない。終わるけど。

 

とはいえ、着いてしまえば3泊予定だ。もう時間をつぶす手立てがない!早く着け!

 

 

魅惑の浪漫が、我を呼ぶ!

第三百三十二話 モーター・A・ダイアリー / ハレロヤ!

出立167日目(通算417日目) アルゼンチン14日目 エルチャルテン3日目

 

 

目覚ましは0時半に鳴る。朝っていうかまだ夜だね。欧米人たちがどこかへ出掛けようとしている。飲み屋とかあるんだろうか。

 

同じ部屋には少し前にコリアンガールズが入ったが、準備をしていると「今から行くのか」と聞かれた。そうだと答えた時の、彼女たちの目の輝きが忘れられない。羨望とかではなく「そんなバカなことする人マジでいるんだ」的なヤツじゃないだろうか(被害妄想)。

「いい写真撮れたら見せてね」と笑顔で送り出された。うむ、暗いから諦めて帰って来た的な退路は断たれてしまったが、望むところだろう。

 

街灯に照らされた道を北に進み、山道へ入っていく。

今回は、ロス・トレス湖とロス・トレス氷河を手前に配したフィッツロイを眺められる場所を目指す。エルチャルテンのベストビューの一つだ。丘陵地帯を横断して湖を抜け、キャンプ場を越えていく。

フィッツロイは「煙の山」と言われるほど雲のかかっていることが多い山らしいので、こればっかりは運だろう。俺の運、試してやるぜ!

 

今回のトレッキング、相当な防寒対策が必要ということで、この旅始まって以来の重装備。もうアルティメットフォームと言っても過言ではない。

そして比較的なだらかな山道と急こう配の山道、合計10kmという距離。まさしく、旅のクライマックスに持って来いだ。いや、これまでの重い荷物を背負った長距離の移動は全てこの時のためだったといっても過言ではないだろう。メキシコにいた頃の私ではダメだったかもしれない。しかしあの頃の自分とは、レベルが違うんだよっ!と気合を入れて、まだ暗い道を進む。こ、怖い。

しかもこんな時に限ってGPSが働かない。お前、今動かないでいつ働く気だっ!?

Wi-fiも弱いし、どうもこの街はそんな感じの様だ。仕方ないだろう。

 

持って来たライトはダイナモ式で、グリップを握って離してを繰り返すことで発電する。電池いらずで便利な反面、発電し続けない限り光が消えてしまう!これが相当きつい。足より先に手が疲れてしまう。まぁ確か中学生の頃、体力測定で握力が女子並みだった私だ。鍛えるには絶好の機会だろう。

 

こうして暗黒魔道を手動のライトセーバーでシャコシャコやりながら進むことになったわけだが、恐ろしく孤独だ。誰かのブログで「○○さんがいなければ諦めていたかも」みたいな記述があったが、私にはそんな贅沢な選択肢がない。一応開かれた道はあるものの、暗闇がために「これで合っているのか?間違った方に進んでいないか?」という疑心暗鬼との戦い。いや落ち着け、これより孤独なことだってあるはずだ。例えばこの先十年経っても結婚できずに老後独りで……ぐはっ、いかん!さらにダメージが!ええい、男は一人で行くものさ!

ともう訳が分からん葛藤を繰り返していたわけだ。何せ10kmあるからね、思考はグルグル回る。どうでもいいけど、このシャコシャコ音、2代目バルタンが襲撃してきた時の小型バルタン出現音にそっくりなんだけど。

 

幸いにも目の前を行く別の集団が。追い抜いたり追いつかれたりを繰り返していたが、面倒なので彼らに加わることにした。イスラエル人の集まりで、男女混合だが、全くペースが落ちない。さすがは性別を問わず兵役のある国。三十路オーバーのもやしジャップとは鍛え方が違うのだろう。しかし彼らに着いていければペースを保っていけるというものだ。

 

うっそうとした山道から、たまに抜ける開けた場所。空が見えれば満天の星、それに照らされた山々もうっすらと見える。素晴らしい景色だ。

しかしそれも長く続かない。ときには雨が降り、晴れたと思うと白い何かが舞う。これは……雪か!?

徐々に脱いできた重ね着達を戻していく。さすがは最後のクライマックス。一筋縄ではいかない。

 

キャンプ場を抜けると、彼らは休憩を取り、食事を摂り出した。先に行こうとも思ったが、行軍に慣れているだろう彼らに従った方がいいのでは、と思い直す。

「お前は食べ物を持っているか」と気にし、自分のがあるからと食べていると、オレンジを分けてくれた。イイ奴らだ。

 

キャンプ場を抜けた先、最後の1kmが最大の難所と言われている。他人様のブログでも「最後めっちゃきつかった」との記載が目立つが、何がどうきついのかわからなかったので簡単に書くと、ビューポイントの湖が山の上にあるためその山を登らねばならないのだ。キャンプしていれば別だが、9kmそこそこの山道を歩いた後に、急こう配な山を1kmの距離歩くのである。そら大変だよな、と思っていたのだが、現実は更に厳しかった!

 

そう、雪である。

最初は「ああ、さっきのね」程度に白かったり、道がちょっと凍ってるかな?程度だったのが、積雪の量が増え続け、最終的に足首が埋まるまでになってしまった。

なお、キャンプ場から来る組が入り乱れたことで、イスラエル人の団体と多分離れてしまった。多分というのは、暗くて顔わかってないからだ。前を歩いているのは彼らなのかどうなのか。まぁ、どうでもいい。それより雪だ。

 

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こんな感じ。そうです、もう完全な雪山。

ちなみに今私が履いているのはユニクロ製の布の靴3,980円くらい。言うまでもなくシティ用の履物で、防水加工なんてないし、靴の裏だってちょっと凹凸があるくらいだ。雪山はおろか、山用ですらない。滑るし中はぐちょぐちょで、止まれば凍ってしまうんじゃないかという状態。間違ってもこんなとこ来ていい状態じゃない!

 

もう布の服とこん棒でスライム相手に戦ってたらハドラーが通りかかったみたいな状況だ。雪あるなんて、あたし聞いてないっ!

どうでもいいがあの世界の王様、「魔王を倒してくれ」とか頼む割に100Gだけ寄越すって頭おかしいよな。その辺の小僧みたいな恰好してんだぞ、こっちは。せめてそこに立ってる門番の鎧と剣をよこさんかいっ!

 

いや確かに、最後のクライマックスだけども、命掛かるレベルの人生のクライマックス的な意味で言ったわけじゃないんですけど!!

 

それでもなんとかあの山の上に行けば……あ、ここゴールじゃないんだ……を繰り返して、ついに頂上へ!キャンプインしていたTさんもいる。そしてこの方向にフィッツロイがっ!

f:id:haruki0091:20171220081402j:plain見えねぇー。

 

これは……霧?雲?どっちでもいいが、もう何も見えない。既に空は白み始めている。が、これでは燃える炎のフィッツロイや金色に輝くフィッツロイは厳しいだろう……。

 

Tさんはここに一番乗りだったらしく、深い雪の中に足跡すらない状況だったらしい。

「昨日下見しておいてよかったです。ま、昨日は昨日で道間違えて迷うし、吹雪いてて死ぬかと思いましたけど」

それ、遭難ですよね。確かにね、ここ来る間、「なんかあったら雪山登山で救助呼ぶ人批判できない」みたいな、同調圧力と自己責任論に裏打ちされた日本人的思考が私を支えていましたけどね。Tさんの靴も、私よりはましだがトレッキングシューズではない。ここに登山に来た人間とはやはり装備が違ってしまう。

 

イスラエル人も登って来た。女の子が最初に着き、あとからぞろぞろ。

「彼女早いだろ?ワンダーウーマンなんだ」

そういや、最新のワンウーさんことガルガドット姐さんもイスラエル人だっけか。二児の母だし、本当にあの人ワンダーウーマンって感じだよね。

 

そんな中、ついに太陽が顔を出す。

 

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ああ、キレイ。普通にこれが絶景じゃないか。向こうの方は晴れているな。そのうちに赤い光が差し込んできた。今だ!

 

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燃える炎のフィッツロイ(エア)

 

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さらに時間が経過し、金色に輝くフィッツロイ(エア)

 

なんかこう、見えますよね、それっぽいものが。こう、心の目で見てください。念写してください。それがあなたのフィッツロイです。人がそれぞれ心に描く姿こそが、その人だけのフィッツロイなんです。

 

しばらく待とうとしていたものの、濡れたズボンのすそに続いて、靴の先が凍って来た。安全靴みたいな固さだ。寒くはないが冷たい。凍傷になるんじゃないかみたいな危機。

 

イスラエル人をはじめ、諸外国人は適当に記念撮影し終えると、さっさと下り始めた。さすが軍人は決断が早い。鍛えられている連中は違うな。

しばらく粘ったが、雲の厚さから回復はないだろうと判断し、道を下ることに。

この下りが正に地獄!踏み固められて滑る道!これは……し、死ぬかもしれない!

間違いなくこの旅始まって以来の悪路!割と急な道なんですけど!滑ると一歩間違うと死ぬんですけど!キツかったとか言ってた人らも、ここまでのは経験してまい!ま、大体の人が2~3月に行ってるから状況違うだろうけどな!クソ、オンシーズンじゃなかったのかっ!?

きっとイスラエル人たちはこれも見越して、踏み固められる前に降りたに違いない。さすが軍人は判断力が違う。

 

山を下ると気温も上がり、歩きやすくなってきた。靴も解凍されたし。

途中、私が1か月前までフィッツロイもアウトドアブランド含めたパタゴニアも知らなかったというと、Tさんが驚愕していた。

「ノースフェイスとコールマンは知ってます」

「そこら辺と同じくらいの知名度です」ということで丁寧に教えてくれたが、どうも知らない方がマイナーだったようだ。どうりで他の人のブログでも仕切りに紹介されたり、着ている服のロゴを指さして記念撮影していたりと、ことさらに強調されていたわけだ。

 

しかしこう、見られなくて残念ではあるし、苦労して登って山以外はコンディション最高だったのでたいへん悔しいのだが、なんていうか、自分の知らないハリウッド女優が歩いてるの見逃したみたいな、何とも言えないレベルなんだよなぁ。

やはり思い入れがないとそんなものなのかもしれない。

 

「キャンプ場から昨日少し見えたんで、そこ行ってみましょう」

というTさんの提案に従って行ってみると……

 

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おお!アレか!?アレなのか!?

フィッツロイは標高3345m。激しい気流が峻険な頂に衝突して空気の塊の凝結が起これば、山頂が煙を吐いているように見える。その姿から、先住民が「エル・チャルテン(煙を吐く山)」と呼んだという。

その特徴的なシルエットから、多くのクライマーや旅行者たちを魅了し、アウトドアブランド「Patagonia」のロゴにもなっている、結構あこがれの地だったりするのである。

 

こんだけ盛り上がっておいてなんだが、あとで知った。この右側の霧で隠れてる方がフィッツロイなんだってさ。でもこの見えてるとこの方がカッコいい気がするんですけど!

 

まぁこういったわけで、無事何となくフィッツロイも見えた。元々あこがれていたわけでもないので、これだけ見られれば充分である。

 

キャンプ場でTさんに別れを告げ、来た道を戻る。

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このあたりの景観も素敵。

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行きは暗くて全く見えなかったからね。こんなとこ歩いてたのか、みたいな連続。

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途中の展望台から。さっきより見えるか?

 

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入口の看板。帰りに見ても感慨深い。途中でこれから登る人らとすれ違いまくっていたが、どうも諸外国の方々は朝焼けのフィッツロイにそこまで関心がないか、きついからやらないかのどちらかなんだろう。そう考えるとやはりイスラエル人の軍人魂は……もういいか。

 

慌てて戻ってチェックアウト。ギリセーフだったな。

全工程合わせると、確かに9時間半くらい経っていた。帰りの方が早かったけど。

そして歩数計を調べたら、あれ、今日だけで28km歩いてるけど……まぁ、よし!

 

この日の夜のバスでの移動のため、10時間近く空いている。しかしチェックアウト後だから眠れないし、今から別の所に行くのも……スゲー歩いた後だからなー。

 

とダラダラサンドイッチ食べたりしていると、Tさんも戻ってきた。結局朝意向でいいタイミングもなかったようだ。

キャンプ用品の返還に向かったようだが、シエスタの時間で店が閉まっていた様で、先に預けていたバッグを取りに来たというわけ。例に漏れず、このホテルのスタッフも休憩時間に入っており、やって来た客たちもチェックインできずに待っている。この徹底したところ、不便だけど日本も少しは見習っていい気がする。

 

その後キャンプ用品返すのに付き合って、そのままワインを買って戻ってきた。ネットも繋がらないので、酒を飲むくらいしかすることがない。先にバスが出るTさんをターミナルまで送った。

 

その帰りに、フィッツロイの方。

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あーこれ、今日はダメっぽいな。運の勝負だというのがよくわかる。確かに、ちゃんと見た人らって何日か粘ってたもんなぁ。

あ、彼、大容量バッテリー置いていってる……

 

かくして時間まで通した私は、増えた荷物を抱えて、24時間近いバスの旅に赴いた。24時間て、多分今回最長だな。

 

21;50発で、夕食付。

f:id:haruki0091:20171220083029j:plainパンの外にチーズとチキンの加工物。……挟んで出しても、罰は当たらないと思うぜ?

ホットフードが良かったけど、ここ始発じゃないから仕方ないのか。

 

夜出発ということで、翌日夜の到着になる。ならもうちょい早く出てくれよって感じだが、致し方ない。

 

ついに旅が終わってしまうな。もう危険なところはないかもしれないが、そういうときこそ気を引き締めねばなるまい!

 

魅惑の浪漫が、我を呼ぶ!